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キャッチ ザ リアル

本や音楽、映画についての意見を伝えます。

 讀賣新聞夕刊で「涙なしでは読めない。」と紹介された上條さなえ「10歳の放浪記」は、なかなか生活を軌道に乗せられない作者の両親、「まいったなあ」と思いながらも、現実をしっかりと見ている作者の10歳の時の姿に、読んでいて涙、思い出しては涙という、すごい本である。
 ただ涙だけではなく、10歳の少女が経験する、たくさんの大人たちとの触れ合い、友情、当時の世相、池袋の街の様子、映画、音楽などのお話が面白い。紹介されたことに、興味をひかれ、見てみたり調べたりしたくなる。
 そして、彼女のパチンコ屋で稼ぐ話、心が通い合った友達とのエピソードなど、映画にしたら、どんなにか面白いだろうなあ、と想像してしまう。
 最後には、児童館、教育委員会のお仕事をされて社会的にも立派になった著者なのだが、高みにたつということがなく、弱者の視点でものを見ているようで、現在の私の苦境などとも照らし合わせ、重層的な読み方ができる。
 おりにふれて、何度でも読んでみたい。また、この作者の他の作品も読んでみたい。