前回からの続き
 

時宗
「空を飛ぶ火の玉。敵の秘密兵器はすさまじいものらしいの」

実政
「すさまじいものじゃ。大音響で馬まで狂い暴れまわり武者は振るい落とされる。されど日本軍の奮戦はさすがじゃ!奇しくも、とどめに暴風雨が敵を沈めた。神仏は存在するものであろう」

記録では日本軍は弱かったということだが、かなりの善戦をしたということを言う識者も多い。その代表が小説家の高橋克彦氏である。しかし、NHK大河ドラマでは原作とTVのギャップが酷すぎる。最終回では、神風に沈んだ蒙古軍を日本軍が助けるという平和運動を利用した日本への恨みを感じるほどの歴史捏造である。

時宗
「自分の祈祷で沈めたという例の僧がまた騒いでおる。良い教えも多いので残念じゃが、ある程度厳しき罰を与えねば民が一体化せぬゆえ困ったものだ。時頼様のお慈悲で何回も命を助けられたが、いつも幕府を悪として民に吹聴するのだ」

実政
「ある程度の罰を与えてやれ。蒙古の味方ということもありうる。日本国を売り、自らが日本の国主となるために動いているかもしれぬ。あやつは歴史の捏造もすると思う。やつは預言者ではない、異国の情報を得ることがたやすい猟師なのだ!蒙古襲来のことは時頼様が亡命する僧などから、やつより早くつかんで国を守るために動いておったのに、やつは人の徳も自分のものとする悪僧だ。
多くの神社仏閣に一体化の蒙古襲来の勝利を祈らせてほしい。もちろん俺も動いてはいる。鎌倉と鎮西の往復で多くの神社仏閣に参拝し共同祈祷をお願いしている。ところで執権殿 体は大丈夫か?」

時宗
「心配、かたじけない。子供のころから丈夫ではなかったゆえ。無理のない動きで政を動かしている。大丈夫だ。自分のことは自分が一番わかっておる。そなたには何でも言える。次に襲来するであろう蒙古軍、 実政殿!死ぬな!この国の行く末はそなたにかかっている」

執権時宗はあまり体が丈夫ではないようだ。

実政
「我らの先祖は多くの人を殺し過ぎた。その業はわれらでくいとめねばならぬな。されど、平家である北条家の徳は限りない。徳は国を救うのだ



時宗
「安部清明の子孫なる者は死後の世界が見えるという。その者も戦勝祈願をしておるが、人間は生き変わり死に変わり永遠の生命に生きるそうだ。安部殿の話と禅の修業によりワシは死ぬのが怖くなくなった。北条は多くの人間を殺し過ぎた。ワシが現地に赴き陣頭指揮をとりたいが立場上そうはゆかぬ。残念じゃ。そのかわりワシが北条の業を受け止めよう。そなたよりワシのほうが早くあの世にゆくだろうがあの世からも祈りそなたを守ろう」

実政
「おいおい、縁起でもないことを言うな!合戦に勝ち、万民の安寧を見ようではないか。勝たねばならぬ戦もある。業だけでなく、徳も積んでいるのが北条家だ。そなたの体も勝利により丈夫になることを確信しておる。石堤防を考案するきっかけを作ってくれた巫女さんは熱田神宮でもかなりの霊力をもっている巫女。そなたの病気平癒もおこなってもらおう」と励ました。

時宗は「にこっ」と笑い。
「安心せよ。鶴岡八幡宮に逗留してもらい。そなたとの関係はだれにもわからぬよう仕組んだ。それにしてもあの巫女さんは接してみると癒される可愛い方よな。例の僧や公家の一部と比べると殺気が全くないわ。近江の某神社に日本何万年の歴史をつづった記録があるらしいということも存じておった。蒙古の大将である大皇帝は案外そういうことを知っていて大襲来をかけたのではないかと思う」
*事実、昭和50年代の週刊誌にそのことが掲載されている。O神宮である。


実政
「その書物にはとんでもないことが書いてあるらしい、空飛ぶ船とかが大昔あったと」
つまり、いろいろな偽書には神武以前の歴史に、現在と同じハイテク文明があったという記述は多い。原始時代といわれる時代にどうやって沖縄海底神殿のような建築物が作れたか?つまり日本が世界最古の巨石文明国なのである。謎が多いが、「人工物に見える自然景観」という歴史隠滅のコメントをする識者もいて、歴史捏造を促進する日本への恨みを感じるのである。

時宗
「実政殿 心配をかけて申し訳ないが、黄金の国日本争奪戦は今生、来世に渡る戦いになる気がしてならぬ。ワシは体が弱いゆえその日その日を必死で生きておるので霊的なことも多少わかるようになってきたのだ。それゆえそなたを守りたいのだ」
史実では、実政は時宗より二歳年上ということになる。

実政はそれ以上言葉がでない。執権は自分の死期がわかっているのか?
「明日も巫女殿の話を聞きたい。心が洗われる。癒される。それにしてもあの身持ちがかたそうな巫女さんをものにしてしまうとはそなたも神から選ばれた者ゆえ神が許したのであろう。羨ましい限りじゃ」と執権は微笑んだ。

執権はわざと明るく接してくれているような気がして実政は熱いものがこみ上げてきたのを押さえた。

実政
「御子殿は、この戦に勝てば熱田大神が未来永劫 北条家を守ると」

執権
「おお それはありがたい。怒るな 実政殿 ワシが死んだ後、そなたの来世、来来世を見守るようにとの声なき声が最近聞こえてきたのだ。そうしたらそなたと御子殿が究極の石築地の案をもってきてくれた。そなたこそ本当の北条の長なのだ」と自らが実政の先祖として長く守ると言っている。

元寇防塁は博多だけでなく長門(山口県の日本海側)にも作られることになる。長門を守るのは時宗の弟、北条宗頼。

実政
「明日の夜は鎮西より、ここにブドウの酒が届く。心の臓によき酒ゆえ、また飲もう」

時宗
「それはかたじけない。そなたらが近日中に戻る途中に我が先祖の発祥の地伊豆の願成就院により北条家始祖時政様に今回の戦いを報告してほしい。御子殿と修善寺の温泉でゆっくりするがよい」