ニュースより

労働者の心身をむしばむパワハラ ── 件数も割合も年々増加
THE PAGE 2014年7月30日 12時0分配信

[写真]都道府県労働局などへの相談件数(出所:厚生労働省)
 職場でのパワーハラスメントがあとを絶たない。全国の警察では、パワハラが理由で今年1月から6月の間に昨年より多い11人が処分されたと発表されたばかり。今年6月には、秋田県横手市職員の男性(46)が上司のパワハラに追い詰められたとの遺書を残し、自殺した。パワハラはなぜ起こるのか?

 都道府県労働局などへのパワハラに関する相談件数は年々増加している。2002年度には6,627件だったものが、2012年度には51,670件に増加。労働相談全体に対する割合では、6.4%から20.3%へと、実に相談件数の5分の1にまでなるほど増加している。その中で精神疾患を発症し、労災補償を受ける人も増えている。労働者の25.3%がパワハラをされたと感じている。


[図]厚生労働省によるパワーハラスメントの分類
 厚生労働省は、パワハラを(1)精神的な攻撃(2)過大な要求(3)人間関係からの切り離し(4)個の侵害(5)過小な要求(6)身体的な攻撃の6つに分類している。企業の側もパワハラの存在を認識し、職場の雰囲気が悪くなり、社員にメンタル面の問題が生じ、退職する人がいることもある程度は理解している。

 筆者は、これまで勤務した3社のうち、すべてでパワハラを受けたことがある。なぜ、「精神的な攻撃」「過大な要求」などを受けるのか? なぜ上司や先輩社員はパワハラをするのか? ということを疑問に思ってきた。

 実際に仕事ができないことを理由にしたパワハラが存在する。たとえば新入社員の場合、一般にすぐに仕事ができる、というわけではない。それゆえ、ターゲットとなる。新入社員は、仕事に慣れ職場になじんでいる社員に比べ、生産性が低い。

 ただ、それならまだ仕事で成果を見せられるようになれば解決できる(実際にはそのパワハラのため、仕事上のパフォーマンスを発揮することは困難だ)が、その中で「精神的な攻撃」や「過大な要求」などが起こりやすい。男性社員に童貞であるかどうかなどということを聞くような「個の侵害」も起こる。実際に私自身は、「童貞はダメだ。稼いだ金でソープに行け」などと言われたこともある。

 会社内にも競争があり、優位であることを社内で誇示して上司の歓心を得る人もいる。その中で、特定の人を無能でありダメだと烙印を押すために行われるパワハラもある。自分がいかに優れているかを示すため、ほかの社員をおとしめる。この場合には、「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過小な要求」が起こりやすい。

 そしてさらに、会社内でのコミュニケーションのためにパワハラが行われることさえある。社内の人間関係を深め、団結を強くするために、特定の人をよってたかってパワハラする。学校のいじめと同じだ。この場合は「精神的な攻撃」「過小な要求」が多い。

 現在のパワハラは、特に「精神的な攻撃」の要素が強い。社内で大声で罵倒したり、無視したりということは私もさんざんやられてきた。こういったパワハラは、多くの働く人を傷つけるだけではなく、組織全体のパフォーマンスをも低下させる。のみならず精神疾患の患者を増加させる原因にさえなっている。

 パワハラを受けた被害者はどう傷ついたのか? 次回は、実際に被害者あった人たちの声を拾う。

(ライター・小林拓矢)