敬愛する白石一文氏の『不自由な心』を読み返しました。
最初に読んだのは、今から約10年前の高校時代だったと記憶しています。
この作品を機に、白石氏にどっぷりハマっていくのですが、
大人の恋愛・人生観を描いた全5作の短編は、当時の私にどう映ったのか謎です・・・。
レビューサイトなどには、
不倫や男の身勝手さに不快感を表している方も散見しますが、
それは表層的な観点だと感じています。
『生きていく上でなにが大切か』を突き詰めて考えていくことの重要性を、
まっすぐに読者に投げかけている作品であり、
あとがきでは『小説の役割』として解説されていらっしゃいます。
作品に加え、このあとがきが
高校生だった私に大きな衝撃を与えたことは、はっきりと覚えています。
何回かに分けて、好きな作品をご紹介させて頂きます。
■1作目の『天気雨』
あらすじ
元ラガーマンで圧倒的な体力・行動力を持ち、社内でも異例の昇進を遂げる42歳の野島。
家庭にも恵まれるが、秘書課の27歳の恵理と恋愛関係にあり、日々神経を研ぎ澄ませながら、家庭と恵理のもとを行き来する。
恵理が過去に付き合っていた男性(渡辺)と結婚する、という噂を野島が聞きつけ、
野島・恵理・渡辺のそれぞれの想いが交錯し、
仙台への大抜擢人事を受ける物語の中で、野島はひとつの決断をする・・・。
感想
野島の男臭さ、恵理の愛らしさに惹かれながら読み進めることができ、
ラストシーンのやり取りに、野島の男としての覚悟を感じ、
この先のどんな未来にも立ち向かえる力強さ・男らしさを感じます。
何にしろ、最後はこうやって自分の心に真っ正直になることだ。
その一事さえ守リ通す力があれば、たとえこの先どのような状況になったとしても必ずや、切り抜けていける。(93P)
という文章に、野島の決意が表れています。
大きな選択をする際には、最後は自分の素直な気持ちに忠実になり、
覚悟を決めて信じた道を歩き続けること。
『もしお前が厭だと言っても、首に縄つけてでも連れていくからな、俺は』(P93)
私の大好きなラストシーンです。