先週の木曜、家の近所の交差点で連れと信号待ちしてたら、向かい側に俺と同い年くらいの男が2人立ってた。
向かい側の信号の真後ろには24時間営業のスーパーがあって、1人はそこの袋を下げてる。信号が青になった。横断歩道の真ん中で俺たちはすれ違って、直後交差点を右折してきたトラックが急ブレーキをかける音が後ろで聞こえた。


まさかと思って停車した2トントラックの向こう側に駆け寄ってみると、いますれ違ったばかりの男の人の右足がタイヤの前輪につぶされて血だらけになってた。引きずられた血痕が路上にべったりついている。
「足が潰されてるので一旦バックしてください」と降りてきた運転手に叫びながらもう一人いることを忘れていた。もう一人のレジ袋を下げていた方は車体の真下で引きずられて気絶していた。

慌てて車をバックさせようとしていた運転手を引き止めて110番してから車体の下の彼に声をかける。反応がねえ、頭をタイヤで潰されてしまったのかもしれないと俺も連れも思った。おそるおそる何度も声をかける中、連れが「死なないで」と呼びかけるとかすかにうめき声が聞こえた。闇の中で目がギラギラ光っていた。

「生きてる!」
通行人の老夫婦に手伝ってもらって彼の体を支えて車体の下から車道に出す。「大丈夫だぞ!」と声をかけながら上半身を支えると彼の首筋を濡らしていた血が俺のジャージについた。サイレンがいくつも重なり合い救急隊員たちが駆け寄ってきた。クソみたいな野次馬どものたくさんの顔を、明治通りを走っていく車たちのテールランプが無機質に照らしてた。


あと3秒か4秒横断歩道を渡り始めるのが遅かったらトラックに潰されていたのは間違いなく俺らだった。その事を思い出してその晩は一晩中家のトイレで吐いた。頭痛がひどくて眠れなかった。この間剛さんが番組でしてた話を思い出した。俺は死ぬのが怖かった。

後日消防と警察から連絡がきた。第1発見者だったので1度警察署の方に出向くことになった。
2人とも命に別状はなかったときいたがタイヤに潰された足に関しては「切断には至りませんでした」としか言ってくれなかった。
何度も問いただしたが返ってくる答えは同じだった。頭の中に広がりかけた悪い想像を打ち消すよう電話を切った。畜生。
生死の境目に突然立たされた時、人はあまりにも無力だ。皮膚が飛び散り肉がむき出しになった足をタイヤに押しつぶされて「足が、足が…」とうめく彼の姿を見ながら俺にはどうすることもできなかった。自分の不甲斐なさに怒りが湧いた。彼の足は大丈夫だったんだろうか?


忘れたくないので自分自身のためにもブログに書くことにした。
横断歩道を渡り始めるたった3、4秒のタッチの差で俺は事故に遭わなかった。忘れない。
まだ事故にあった事のない人に少しでも考えてもらえたらと思って2日かけてこの文章を書いた。でもこれを読んで過去に大事な誰かを亡くした辛い経験や自分が事故にあった記憶を思い出してしまった人がもしも1人でもいたら本当にごめんなさい。


あした警察の実況見分に行ってくる。
あさっては核MIX。
燃え尽きるまで生きる。


輪入道