蔵王西麓「悠創の丘」を狭霧のように包む春の気配
昨日の昼過ぎ、打合せや諸々の事務手続きのために訪れていた大学で、
ぽっかりと二時間ばかり暇ができた。
雲は重たく陽は射していないが、気温は意外に上がっていてうららか。
山形市郊外の蔵王山麓にあって西に雄大な風景が広がり、
キャンパスも都心の大学では考えられないほど余裕がある。
素晴らしい環境の中にある大学だと思っていたが、
周辺を散策する機会に恵まれていなかった。
ちょうどよい、ちょっと一巡りしよう。
木っ端を敷いた遊歩道をたどり小高い丘の上に建つ東屋まで登った。
大学から眺めるよりのさらに広がりのある山形市があった。
もっと高いところへ登ってみよう。また少し、風景が変わる。
小径は下ったり登ったりうねったりしながら、さらに山懐へのびていた。
いろいろな種類のサクラがちょうど見ごろを迎え、
初めは華やかな満開の花々に目を奪われていたが、
道から少し外れて足許をじっくり観察したところ、
次々と北国の春を告げる野草の花があらわれた。
最初は、うつむき加減に半ば開いた白いイチリンソウ。
次いで淡い小豆色のエンレイソウ。
とても地味な花だが、漢字で書くと延齢草で、縁起のいい名前だ。
そして春の花で一番好きなカタクリ。
畑の小道には、キバナノアマナ。
桜の名所として近隣では知られた耕源寺で、住職の奥さんらしき人が、
「今朝はまだ少し開ききっていなかったけれど、
この暖かさで今日満開になりました。
隣の梅も今が満開で、こんなことは初めてです」
先ほどは、沢筋でやっと見つけ一輪二輪三輪と数えながら
しゃがみこんで愛でたカタクリだったが、
車道に面した寺の土手一面に生えていて拍子抜けしてしまった。
これも、北国ならではの贅沢だろう。