長崎で離島振興について考えた(1) | 旅、島、ときどき、不思議

長崎で離島振興について考えた(1)

 先日、NHKに呼ばれて長崎まで出向いたことは記したが、
 出演したのは『長崎のこれから~どうする!? 離島振興』という番組。


 「みなさん、番組が終わってから、
  言いたいことがほとんど言えなかった、
  ということが多いので、どんどん発言してください」
 放送が始まる前、ディレクターから繰り返しそう忠告されていたし、
 以前出演した友人も、宙ぶらりんのまま終わってしまった、
 と言っていたので気には留めていたのだが、やはりその通りだった……。


 ぼくが一番言いたくて一応発言できたのはのは、
 「振興」された状態を具体的にイメージし、それに向かって進んでいかないと、
 なにがなんだか分からなくなる(現状はそう)、ということ。


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 小さな島なら島民全員で、大きな島なら幾つかの集落ごとに、
 自分たちがこうありたいと考える将来像を明確化すべきである。
 そして、その将来像が現実のものとなった時、
 そこまでいかなくとも実現に近づいていけば、
 振興した、あるいは、振興された、といえるのではないか。
 不要な道や港湾施設、カラオケ大会にしか使われない文化ホールが
 いくつ出来ようと、今や振興とはまったく無縁だと言っていいだろう。


 社会基盤の整備が本土に比べて大きく遅れていた時代は、
 振興の具体的なイメージがはっきりと存在した。
 たとえば、連絡船が直に接岸できる規模が大きく頑丈な港。
 ―艀(はしけ。本船との連絡用の小舟)による通船作業は、命の危険も伴った。


 自動車で一周できるくらいの幅がある道路。
 毎日の水汲みから解放してくれる簡易水道施設。
 そして、発電施設と冷蔵庫が使えるくらいの給電時間。


 ―電気は、24時間くるものとは限らない。
 ―電気が1日12時間くらいくるようになると、
  冷凍庫内は冷えてはぬるくなりまた冷えるので、
  電気「冷凍庫」を「冷蔵庫」代わりに使えるようになるのだ。


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 最近よく離島振興に必要なものとされるのは、
 交流人口の増加、一次産業の振興、U・Iターンの誘致など。


 交流人口の増加?
 じゃ~、何人来ればいいのか? たくさん来たら、どうなるのか?
 100人しか来なかった島に、1000人来れば振興か?


 一次産業の振興?
 国全体の農漁業政策がなきに等しく、条件的に恵まれた本土でも大変なのに、
 どうなったら振興したことになるのか?
 農作物や水産物の販売額が、倍増すればいいのか? それとも、3倍?


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 交流人口を増加させるのは簡単だ。
 定住者がいる島への公共航路は、すべて道路とみなせばいいだけの話。


 例えば、普通船(⇔高速船)やフェリーは一般道とみなし、当然無料とする。
 高速船は、高速(有料)道路とみなし、それなりの額を徴収する。
 ただし、高速船しか就航していない場合は、もちろん無料。


 そして、高速道路の無料化と大きく異なるのは、限りなくエコだということ。
 個々人が勝手気ままにクルマを乗りまわし、
 用もないのになんだか得したような気がするからとわざわざ遠出して、
 思いきり排気ガスをまき散らすようなことにはならない。


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 交流人口が確実に増加する基盤(公共航路の基本的無料化)ができるまでに、
 島人たちは自分たちの将来像をはっきりと見据えておけばいい。


 小さく地味が豊かな島ならば、全島オーガニック化を図ってもいい。
 この島の農作物=有機栽培、となれば、
 多くの人が、買い物がてら島を訪ねてくるのではないか。
 なにしろ、船代はダダなのだから。その分、買物意欲は高まるだろう。


 有機野菜に興味がある若い人たち(もちろん老人も)が、
 島へ移り住んでくるかもしれない。
 遊びに来る人に食事や土産を提供する店も必要になるだろう。
 オーガニック野菜のレストランで安心安全な食事を楽しみ、
 お土産は、有機フルーツ使用のケーキ、コンフィチュール……。


 そういう芽生えは各地に散見するのだが、まだ一島全体では存在しない。


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 一方、自分たちは心安らかに老いて、
 静かに無人島化するのを待ちたい、という島があってもいい。

 次回は、五島列島福江島で見聞きした、新たな取り組みを紹介したい。


 (つづく)


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