イヌとヒトは昔から生活を共にしてきました。その結果、イヌとヒトの間には他の動物にはない関係が築き上げられ、互いに影響しあいながら共に進化をしてきた(共進化)と考えられています。実際、ある学校の教室にゴールデンレトリバーを一頭座らせておくだけでそのクラスのテストの平均点があがったり、イヌと共に生活することで癌患者の寿命が延びたという報告がされています。現在、その因果関係を完全に証明できているわけではありませんが、イヌとヒトは何らかの影響を与え他の動物にはないコミュニケーション能力があると考えられ、研究が進められています。

 そんな、ヒトとイヌならではのコミュニケーション能力の一面を今日は紹介します。

 

実験① 

中が見える柵の中にエサを入れて置き、オオカミとイヌでどのような行動の差が見られるかを観察しました。

どのような行動の差が見られるのか予測してみましょう。

 

結果

オオカミは柵の中のエサを取ろうとして、柵をひっかいたり噛んだりして柵を壊そうとしました。そして、柵の下に何とか自分が通れるような穴を掘り、柵の中に入り、エサを獲得しました。

では、イヌはどうでしょうか。

まず、柵の周囲を1周し、柵が壊れず中に入れない事を確認したのち、行動を記録している観察者の前に行き、「おすわり」をしました。そして、観察者と柵の中のエサを交互に見て、目で訴えるような行動をしました。

 

実験②

今度は、ヒトの眼線に着目して、イヌ、ヒトに育てられたオオカミ、チンパンジーを用いて実験を行いました。

複数の箱を用意して、1つだけにエサを入れておきます。それぞれの個体の前に箱を並べ、実験者がエサの入った箱に目線を2回おくります。エサの入った箱を当てると正答としてその確率を調べました。

さて、イヌ、ヒトに育てられたオオカミ、チンパンジーのうち、最も正答率の高かった動物はどれでしょうか。

 

結果

以下の表に表します。

(上の表は「犬と猫の行動学」より)

 

 オオカミはヒトに育てられたとしても、ヒトの視線を用いたコミュニケーションの取り方は獲得できず、ヒトに近いチンパンジーであってもイヌより劣っている結果となりました。これは、イヌがヒトとのコミュニケーションにおいて高い能力をもっている事を示唆しています。

 

ドイツの研究によると。。。

 ボーダー・コリーのリコは、飼い主から「(知らない名前の)おもちゃを持ってきて」と命令された場合、リコに提示されている10個のおもちゃの中から、自分がこれまでに見たことがないおもちゃを拾って持って帰ってくるのです。これは、知らない言葉を飼い主からいわれたので、知っているものではなく、知らないものを探すのだ、と理解していることになります。「おりこうさんなイヌだね」ではすまされない、高い能力を持っているといえるでしょう。

 

 イヌとオオカミは共通の祖先をもつといわれています。共通の祖先がヒトに飼われるようになって進化したのがイヌ、ヒトと関わらず山で生活し進化したのがオオカミであると考えられています。しかし、イヌとオオカミの違いはそれだけではなく、イヌとヒトが長い間共に生活をし、共に進化してきたから獲得できたコミュニケーション能力がイヌにはあるといえるのではないでしょうか。(祐)