どうも。
砥石川です。
長きに渡ったプルースト地獄を終え、我が積読本の中からその後の読書一発目作品に私が指名したのは、本命の大江健三郎「宙返り」ではなく、長嶋有の谷崎賞受賞作「三の隣は五号室」であった。
これも購入してから随分経つ。
我が家の積読本コーナーに収まった後、1年近くは読まれるのを待っていた筈である。
私はこの作家の「夕子ちゃんの近道」が好きで、こいつを読んで以降、彼の作品を5作ほどは読んでいるはずである。
作品の内容同様に淡々と、あっさりと述べさせていただくなら、「三の隣は五号室」は、この大江賞受賞作に負けず劣らずの作品で、面白かった。
ただし、途中までは、「面白いけれども、谷崎賞を取るほどのものかなー」などと偉そうな印象も抱きながら読み進めていたところもあったんだが、それというのも、私には谷崎賞というのが国内最高峰の文学賞だと刷り込まれており(まー、長編における最高賞であることは間違いないとは思われる)、この文学賞の象徴としては大江健三郎「万延元年のフットボール」というのが同様に刷り込まれており、これを比較対象とするなら大方の受賞作候補作が、私にとっては役不足に感じられても致し方がないのだ。
しかしながら、最後まで楽しく読め、読了後はやはり「うむうむ」と納得の首肯であった。
前回読書ブログで「失われた時を求めて」を「(スノブ、もしくは本物の読書家以外の方には)お薦めしない!」と断言してしまった私だがw、この「三の隣は五号室」は大推薦できる。
私と同じような偽読書家にもww
全然難しくないし、それでいてきちんとひっかかりのある文体にはなっている。
作品に関しては、なかなか簡単に説明が出来る。
とあるアパートのとある部屋に住んだ歴代の人物たちの、部屋での生活と物語が、かっちりと整理されない時系列、神様視点の三人称で、淡々と語られる。
この淡々とした感じがこの作家の味で、私は好きなのだ。
文庫本の解説を村田沙耶香が書いている。
実にシンプルで、だがツボを押さえた解説であった。
「コンビニ人間」で一躍有名になった女流作家だが、私はその芥川賞受賞作と「地球星人」しか読んだことがない。
私と似たような人だと思われる(ダメ人間だと言っているわけなんだが、きっと彼女は許してくれる)。
今後、その作品をチェックしていきたい。
で、この解説を読んでしまうと、私としてはその劣化的な文章を書くしかないわけで、面倒くさいので(かたじけない)、彼女も解説中に引用している登場人物の(心の)つぶやきを引き写して終わりにしたい。
これらの実にシンプルな箴言が、この作品のテイストと内容を、端的に代表していると思われるから。
中上健次は「路地はどこにでもある」と言ったが、本当は奇蹟だってどこにでもあるのかもしれん。
生きていて「何も起こらない」なんてことは、本当はない。
人は生きているとただそれだけで、知らないうちに思った以上に「生きている」のだ。
ありがとうございました。