私のブック・ソムリエ(と勝手に呼んでいる。仕事のお客様です。)から87分署シリーズが回ってきた。
エド・マクベイン作『警官嫌い』が1956年に出版されてから50年近く続いた警察小説シリーズものの2巻目にあたるのがこの『通り魔』。
今のところ5巻目まで読んだが、ラノベのようにサクサク読めるので小学校高学年くらいの年齢からご高齢の方まで幅広くオススメできる上、良作。
このシリーズについては多くの方が書評を語っておられるので、敢えて私の下手な感想文を披露して恥ずかしい思いはしたくない!
と思っていたけど、エド・マクベインの豊かな表現力に感化されたので、これだけはブログに残しておこう。
科学の本質をそのように表現するか…!と感心した次の場面。
「 死体検案書には、つめたい、科学的な事実だけしか書いてない。
人間の血と肉を、医学用語になおし、センチではかり、冷静な無関心さで分析する。感情や、また哲学的思考のはいる余地はない。縦8インチ、横5.5インチの、よそよそしい公式文書一枚ないし数枚の報告書だ。タイプで打ってあり、いかなる条件でいかなる人物が死に遭遇したかを、医学用語で、なんの形容詞もなく説明してあるにすぎない。
解剖され、精密な検査をへて死体検案書ができ、それをマイヤーが、今、バーンズ警部のところにとどけたのだが、それはもとジェニイ・リタ・ペイジとよばれていた若い娘に関するものだった。
死体検案書のタイプでうたれた文字はつめたい。
死にたいして、いちいち同情してたんでは、検視官の仕事はつとまらんだろう。」
死体検案書についての説明なのだけど、深い洞察力あってのこの表現力。
そう。科学は万能ではなく一面でしかない。その事実を改めて思い直させてくれた。
「ホー・・・っ」と関心して一瞬手が止まったけど、この後に続く展開が面白くてページを捲り続けてしまった。
このシリーズは本当に面白い!