心の洗濯時間~私と物語たち
「あの星へ帰りたい」…本当の愛とは?いつの時代かも分からない昔に生きたユウ。短い生涯の終わりに
             気付いた本当の愛とは?
「おばあちゃんの昔話」…大正生まれの祖母が幼い頃の記憶をたどった昔話。物質的には貧しかった一昔前の                庶民達がいかに心豊かな日々を送っていたかが感じられる。最愛の祖母がいなくなっ                た今、私の宝物。
「心に響いた名文、名言集」…日々の暮らしの中で出会った美しい言葉、勇気の出る言葉、感動した言葉など
               
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おぢいの思い出~その続き~

そうそう高小一年(今の中学一年)の頃、毛糸の編み物が流行りだした。友達同士で教えあったりしながら小さな巾着や紐を編んだりしていたら、おぢいさんが「きんかん頭(はげ頭)が寒いさかい帽子案でくれ」と言うので、分からないなりに一生懸命編んであげた。ナイトキャップのようなその帽子がたいそう気に入っていつもかぶって歩き、学校の前を通ると友達が「粟賀さんのおぢいさんや」言うてさわぎ立ててもおぢいは悠々として楽しそうに見え、私も嬉しかった。父は広い畑に柿の木を植えて耕作の労を少なくしようとしていたがその間作に祖父が色々作っていた。自分が散髪屋で涼しい日陰で働いているのに年寄りの親にえらい目さして心苦しいと思うのか「おぢい、山へ行くのもう止めんかいな」と言うたことがあった。「わしに山に行くなと言うんは死ね言うとんと一緒やどー、そんなことは言わんといてくれ」と言って相変わらず皿ふごかついで山通いを楽しそうにやっていた。兄や私も育つにつれてよく手伝いに行かされた。祖父の思い出はいっぱいあるけど、今日はこれでおしまい。

おぢいの思い出~続き~

祖父は出かけるのが好きで、いつも私が付いて行かされるのですけど、本人は孫を連れて行って喜ばせてやっているつもりでしたやろ。ある年の厄神さんの祭り(松原八幡宮二月十九日、白浜町松原)に「踏み切りによう気つけるんやで」と母に言われ、おぢいの着物の袂をつかんで引っ張りながら付いていきました。その頃は遮断機なんかなかったので音で近づく電車を聞き分けるのです。人ごみの中を拝殿前までついた時、おぢいは煙草入れの中からお金をつまみ出し「これ賽銭箱に入れな」と言って私の手にのせてくれました。見れば五十銭銀貨やったので「これ五十銭やでー」と見せましたが「早よ入れんかいな」と言われ、心の中でためらいながらも放り込んでしまいました。家に帰ってからふと見るとおぢいが煙草入れの中をごそごそと探し物をしている様子にハッとして「あれ、やっぱり一銭やと思とってんやわ」と思い「おぢい、お賽銭、なんぼあげたん?」と聞くと「そら、お賽銭は一銭に決まっとんがいな」「あれ五十銭やったでー」と言うた私に「ほうか(そうか)」と言うただけで小言も言わず煙草入れを片付けていたけど、その時悪いことしたなあ、もっと大けな声で言えば良かったと後悔した。家では私の言葉が一番おぢいさんに通じやすく「おぢい御飯やでえ」とか「風呂沸いたでー」とか大きな声で言えたのに、人中で恥ずかしかったんか念が足らなんだためにおぢいの小遣いが減ってしもたなあ、早よ大人になってお金もうけしておぢいに小遣い上げんならんと深く思うた。五十銭もお賽銭あげたご利益かしらんけどおぢいさんは元気で長生きした。私も十七の年からミシンを踏んで稼いだお金で何回かの盆暮れにお小遣いを上げることが出来て良かった。

おぢいの思い出


祖父は耳が遠いけど、足は丈夫で山一つ越えならん畑へ毎日のように「腹減らしや」と言うて出かけ折々の季節のものを作ってくれていました。「西瓜が熟れとうさかい学校から戻ったら来いよ」と寂しいもんやから誘うのです。母は「おぢいの煙草の火によう気つけるんやでぇー」と私を送り出し、どうやら監視役のつもりだったようです。草をかき分ける様にして山道をこわごわたどり着くと「よう来たのおー」と言って小さな西瓜を鎌で割ってくれ「早よ、食べえー」と自分も土に座って愛用の煙草入れから煙管を抜き出しきざみ煙草をつまみ出してつめ、マッチをすって火をつけ、すっぱすっぱと煙を吹かして一休みしました。日照りでぬくうなった西瓜は生ぬるいけど、甘くて、山道を歩いてのども渇いていたから美味しかった。畑の南はすぐに海近く山裾に突き出た岩陰の草むらには鬼百合や芒がしげっていました。海水を引き入れたみお(人工の水路)を渡り、浜えんどうが咲きつづく小道を行けばすぐ東ばばといわれている海岸に出て遠浅の海が目の前にひらけます。海に突き出た岩山には松の緑が生い茂り、子供心にこんなええとこがあるやろか、と思うほど好きな所でした。現在は道が開けて行きやすくなったかわりに昔の面影はなくなってしまいましたけど。

てすと

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