ババ抜き[盗品を巡る騒動記) その9 | ゴマメの呟き・アンモナイトの徒然草

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このお話はフィクションです。似たところがありましても、実際の事件、地方名、実在のお店、人物とは関係ありません。


その10

一条氏の話続きその3

私どもから作品を買ったばかりに、損をする事になったギャラリー・パンジーの梅田氏は、直ちに、今回の取引を白紙に戻すよう要求してきました。

しかし私は、その作品、売った時点では、盗品では無かったわけですから、私どもの取引規定を盾に、梅田氏の要求を拒否いたしました。

所が、梅田氏と言う人は、これがまた、大変にしつこいのです。そんな事を一度や二度言ったくらいで、すんなり引き下がってくれるような人ではありませんでした。

私どもの所は言うまでもなく、本店にも、何度も何度も電話を掛けきては、執拗に、この取引は、無効であるから、白紙に戻し、お金を返してくれと言いつづけられるのです。

弱りましたねー、本当に。何せ、しつこいものですから。

更に梅田氏は、電話を掛けてこられる度に、必ずと言っていいほど、捜査員が最初にうちのお店に来た日だとか、その時の状況、そしてその時の捜査員の言動、さらには本店と私どもの店との契約関係、この件についての本店側の意向などなどを、くどくどと聞かれるのです。

これは本店に対しても同じようだったようです。

人間、こうして同じような事を何度も何度も繰り返し言葉を変え、順序を変えて聞かれ続けますと、どうしてもぼろが出て、隠していた事が漏れてしまいがちです。

今回の件につきましても、繰り返し聞かれているうちに、本店の受付の男がうっかり、この作品が、盗品の可能性があり、警察から、販売を指し控えて欲しいと言われていたものであった事を漏らしてしまいました。

よわりましたねー。

これでもう勝負はついたようなものです。

それでもなお私は、せめて半分でも、三分の一でも自分の所の損を少なくしたいと思い、粘りました。

だって、何も悪い事をしたわけじゃないのに、うちだけで、ババを掴んで、損害の全てを蒙らなければならないなんて、あまりに悔しいじゃありませんか。

そんな事を考えるのは筋違いである事は頭では分かっているのですが、誰かを道連れにしたいという、悪魔的感情が頭をもたげ、離してくれなかったのです。

その11

ギャラリー・パンジーの梅田氏の話 

「それから数日後のことでした。

警察からの、圧力があったのかどうか分かりませんが、フクフク太田川店の一条氏から突然電話があり、「今回の取引は白紙に戻し、私どもがお売りした作品と引き替えに、売買代金はお返しさせていただきます。

なお、問題の作品は、私どもから、所轄の警察署へ、提出することにいたしました」と言ってきました。

話しぶりからすると、どうも本店の方から、「この取引を、白紙に戻すように」とかなり強く言われたらしいのです。

これで一件落着、私としては、やれやれです。

本当にいろいろ、ありがとうございました。おかげ様で助かりました。弁護士さんにも宜しくお礼をいっておいてください」

『でも、この結末は、一条氏にとっては、よほど腹にはいらないようで、取引が終わった後も、「そんな物、盗られた奴が、不用心にしていたからいけないのに、そちらの方は、皆さんの同情を受け、その上全く、損をしなくてよくて、

盗品を買わされてしまった古物商の私だけが、何の間違ったことも、悪い事もしていないのに、ババを掴まされてしまうことになったのは、どう考えても、おかしい、おかしい」と、未練がましく、ぶつぶつ言ってらっしゃいました』

確かに、そういう事を、常習的していらっしゃる、悪質な業者は別として、知らずに、盗品を買わされてしまった、真っ当な業者の場合は、気の毒な話です。その業者の立場に立ってみれば、こんな悔しくて、腹立たしい話は無いかもしれません。 

でも考えてみますと、明日は我が身。買い取りをしている以上、何時そんな目に遭わされるか、分からないのがこの業界です。

購入先には、よほど気をつけないとね。                     

     終り