うまい話には、罠がある その5 | ゴマメの呟き・アンモナイトの徒然草

ゴマメの呟き・アンモナイトの徒然草

他所のブログを2つもっています。ぜひ遊びにきてください。

1019日送付


鼬の最後っ屁を嗅がされそうになった話


その7 


そうまで反対されますと、私も、それを押し切ってまで、自分独りで遣っていく自信がありません。

それにお勤め先に帰って、その画商さんと取引がある画商さんに、Aさんのところの支払いの状況を、それとなく聞いてみましたところ、「最近少し沢山に買って貰いすぎた為か、支払いが、滞りがちで、チョット困っています。」


「でも絵のほうの相場も下がってき始めているので、いまさら絵で返してもらっても、どうにもならないしねー。良いお客さんだから、こちらも強くもいえないし、困ったものです。

でもあそこは、他の商売の方が、うまくいっているという聞いてますから、多分大丈夫だろうと思って、今のところは、待ってはいますが。」との話です。


やはり資金繰りが、かなり苦しく、ご無理をなさっているらしい様子が窺えます。

 

いろいろ考えた末、やはりこのお話はお断りしました。


Aさんはずいぶん残念そうでしたが、

「未だその時期でないと、父が反対しますものですから、折角のお話ですが、今回は断念させていただきます。

これからもよろしくお願いします。」とお断りの電話をしますと、

「そうですか。チャンスの前髪を捉まえる勇気のない人は仕方がないですねー。

もっと期待していましたのに。マアー、せいぜい今後も頑張りなさいよ。」ということで、この話は終わりました。

その8 

 

この後しばらくして、銀行の総量規制の影響が、じわじわと全ての業界に効いてきました。

株も、土地も、絵画も、全てが大暴落。

それまで借金で事業を膨らませきっていた所は、全て借金に苦しみ、貸し手である銀行もまた、貸し金の回収が旨く行かず、破綻する時代がやってきたのです。


私たちの業界でも、例外ではありませんでした。

にっちもさっちも行かなくなって、倒産された業者さんの噂が、絶えず聞こえてくるようになりました。


 私にあの話を持ってきてくれた、Aさんのところも、例にもれず、バブルの弾けた影響を受け、倒産し、夜逃げしてしまわれました。


画廊の未払い買掛金だけでも、22億円に上り、このため、連鎖倒産に追い込まれた所や、倒産寸前に追い込まれた所も、数多く出ているとの噂でした。


あちらこちらに持っていた土地も、盛大にやっていた焼き鳥屋も、全てが銀行だけでなく、高利貸の担保も付いていて、どこの画廊も、売掛金の方は一円も回収できないで、皆困っているという噂でした。


本当に危ない所でした。皆の話から想像するに、あれほど熱心に誘ってくれたのは、当座の金繰りのために、私を利用しいよとされたようです。

私に、他所の画廊から絵を借りてこさせ、それを安く売るか、高利貸の所に担保として入れてしまって、当座の資金繰りを凌ぎ、責任だけは、私にとらせようという魂胆だったようです。


もしも私が、この話に乗っていたとしますと、今の私は、ないところでした。それこそ父親の言ったとおり、膨大な借金を払いきれす、一家丸裸になって、夜逃げという悲惨な運命が待っているところでした。やはり「旨い話には罠がある。」ということですね。

その9

 当時の私は、よほどの、アマチャンと見えたのか、或いは私が独立したいという意欲を持っているのが見え見えだったのか、バブル崩壊後、こんな話が、しばしば私のところに持ち込まれたものでした。


百貨店での出店の権利と在庫ごとに、画廊を格安で譲ってやるという話だとか、


現在貸しビルで遣っている画廊を閉店したいから、ビルを借りている権利を、持っている商品ごと格安で買わないかと言った話がありました。


しかし百貨店の権利ごと画廊を売ってくれるというお話には、在庫の何十倍にもあたる、その画廊の借金もついており、もし知らずに買っていれば、即借金地獄に陥る所でした。


画廊をやっている貸しビルの権利を買うというお話は、画廊そのものを買うのではありませんから、リスクはそんなに高くはありませんでしたが、その借りていたビルが、競売後とり壊される予定になっているもので、数年内に立ち退かねばならないというビルでした。


しかも格安で売ってくれると言ってくれた作品の方は、店じまい大売り出し後に売れ残った作品ばかりで、そんな作品は、例え買ったとしても、格安でも何でもなく、大損になるだけの所でした。


そうそう、そういえば、バブルの最中、お勤め先には内緒で、アルバイトに励んでおられた人たちも、バブルの崩壊とともに、売った先からお金の回収ができなくなり、いつの間にか皆さん、この業界から姿を消してしまいました。


どなたも、回収不能のそのお金の支払いを巡って、お勤め先とは随分揉めたとか。


父の言ったとおり、やはり王道を歩いていたのが一番でした。


世の中には、自分が苦しくなると、それから逃れるために、ババ抜きのババを、隣の人に回そうとするように、自分が払えないで困っている付けを、他の人に回そうとする、けしからぬ奴が一杯います。


鼬の最後っ屁と言う言葉もありますから、やはり「お金で追い込まれている人には近づかない。」

「うまい話には罠があるから眉に唾をつける。」

「どんなに良さそうに思える話でも、危ない話にはのらないように心がけるべし。」というのが、この業界で長年やって来た、私が掴む事が出来た教訓です。

                           終わり