母の最期の言葉は

 

「ここから体中の水分が出て行ったのよ」

 

(両腕を指して)

 

これだったことになる。

 

もしそうなってしまうのなら

私と家内のほかの、母の親戚知人はもう

母と言葉を交わしたくてもそれは無理になる。

当然私や家内もそうなのだけれど

これまで本人の希望により、すべて面会はシャットアウトしてきた。

実弟家族だけは数回面会した。

その他の親戚・知人は入院してから一度も面会していないし言葉を交わすことはなかった。

これを書いていて思い出したが、一人だけ電話で

入院中の母と話をした母の親友がいた。

その人一人だ。

実姉から、入院中に手紙は来て本人は読んだ。

しかしもはや返事を書く気力はなく、読んだだけ。

二度か三度か・・・

 

もし、母がもうこの先言葉を発しないのなら・・・と

にわかに罪悪感を感じてきた。

たとえ、それが母の意思で皆と会わない硬い意志だったとしても

なぜ、それを解く努力をして、皆と会わせることを私はしなかったのか?と。

 

まだ一日ほどしかたっていないが

移動した先の老人ホームの介護者は

 

「うなづいたりはされますね」

 

と言っていた。

確かに私もそう思う。

ただ、正直言って

声がするので、それに反応しただけなのかもしれない、と。

昨日家内が大きな声で話しかけたら

うなづくのではなくて

首を横に小刻みに震えるように動かした。

それが、うなづくのではなく逆のNOの意思だととらえることはできるが

そうではなく 大きな声(音)に不快感を表しただけかもしれないと

そう解釈もできると。

 

退院前の主治医の説明に

「ここへきて認知能力(の低下)も・・・

 検査が詳しくできてないので・・・云々」

とあり、本当のところは混沌としている。

検査を要求して、明らかにしたいとも思わないし

たとえ検査をして主治医の説明を求めても

わかることはそうはないと、私は思う。