07 スティープルチェース編Ⅲ
この件に一条家まで関わってくるかと焦ったが、杞憂でよかった。これ以上状況が複雑化したら、力づくで盤面をひっくり返しているところだ。いや、いっそのことスティープルチェースのコースを破壊してしまうか。そうすれば、どんな仕掛けも関係ない。九島家の目的も、国防軍の思惑も、本来俺には関係ない。地表すぐ下に質量爆散《マテリアル・バースト》を撃てば、通常兵器の爆発と区別はつかないだろう…疲労のあまりとんでもない打開策を考えついた、達也センパイ!さすがはお兄様、考え方が完全に独裁者のそれですわね?意思を持った大量破壊兵器なんて、取扱注意どころの騒ぎじゃありませんわ…!?
九島家が極秘裏に行なっていた実験は、パラサイトを女性型戦闘ロボットに憑依させたパラサイドールの開発だった。パラサイドールの運用実験が行なわれるスティープルチェース・クロスカントリーの会場警備は、異常なまでに厳しく、達也ですら侵入出来ない。そこで達也はピクシーにパラサイトの監視を命じ、自分はエンジニアとしてCADの調整を行ないながら、下級生への指導を行なう。だが連日の激務と緊張の連続で達也はこれまでにない疲れを感じていた。