<上山市に伝わる伝説>

 

上山市権現堂にむかし姉と妹がいた。

姉は大人しい人柄だが、妹の方は気の強い性格だった。
姉妹の父神は、蔵王山と月山をこの姉妹に分けて住まわせようとしたが、
二人とも「月山」といって譲らなかった。

 





困った父神は、姉と妹にそれぞれ蓮の花の蕾を一輪持たせ、
一緒に寝るうちに、早く花が開いた方に月山を与えるという。

 


※インド 蓮の実をもつ聖観音(羽黒の本地仏)


姉妹は、一輪ずつ蕾の蓮をもらい胸の上に握って眠った。

しばらくして妹の方がこっそり目を開けてみると姉の持っていた
蓮の花が開きはじめているので、そっと姉の手から蓮の花をもぎとって自分の、
まだ咲きそうにない花を姉の手に握らせて眠った。

朝になり目を覚ますと、妹の花は満開になっていたので、
父神は妹を月山に与え、姉の方は蔵王山を与えた。

そのことがあってから、蔵王山に邪心な人が登ると荒れたり怪我をするといった話がある。

今でも上山市権現堂のお堂には、姉妹二神が蓮を持って祀られているが、
姉の方は目をつむり、手にもった蓮の花は蕾だが、
妹の持つ蓮の花は咲き、目もぱっちりと開いている像だとされる。

(山形・村山地方の伝説 武田 正著)

 

 

 

紅葉の月山は美しかった。

壮大な山。


権現堂は蔵王修験者が休憩した所というので、
蔵王派と出羽派の修験場の所有権をめぐる話のように思え、
陰と陽の関係。

 

イワナガヒメとコノハナサクヤヒメのように。

妹はいつも姉をみているから、いいところばっかり盗んで楽をするタイプ…。ニヤニヤ
そんなズル賢い妹が鎮座する秋の月山へ登ってきました。笑

ご機嫌よく天気もまずますの良好!

写真は2014年の10月
素晴らしい絶景を堪能して下さい!

月山登山の場合、山頂に最短ルートで登れるコースが姥ヶ沢。
リフトに乗って姥ケ岳~牛首~山頂へ。往復3時間半のコース。
弥陀ヶ原からのコースも人気ですが、ちょっとロングコース。
初心者向けならば、姥ヶ沢コースがお勧めです。

 


姥ヶ沢コース

美しい草紅葉の月山を眺めてきました。
写真をいっぱいアップします♪

確か、この年は蜂子皇子の開山で羽黒へも行っていました。
この頃は、何度も出羽三山へいってました。

 

 

不老不死の月

 

 

 

 

 

 

 

月が不老不死であることは世界の神話にも多く伝わっています。

太陽と月の神話は二柱となり、鏡であるといった考え方があり、
鏡を神として祀る日本の思想には、太陽と月が関係しています。

鏡を通して人間の思想や創造を映し出しているという事は、
悪いことを創造してしまったら、
鏡を埋め、沈めてしまえばよいのです。
(鏡を池に鎮めた出羽三山神社)

ツクヨミの変若水(おちみず、をちみづ)とは
飲めば若返るといわれた水。

月の不死信仰に関わる霊薬の一つ。
人間の形態説明の一部としても形容される。
西洋のエリクサー、中国の仙丹にあたるものである。(wikipedia)



※西王母から貰った不老不死の霊薬の神話「嫦娥奔月」


嫦娥はその薬を飲み1人月へ昇り月宮(広寒宮)で
寂しく暮らすことになったという中国版「かぐや姫」

 



妻がカグヤヒメである夫は、弓の名手である

射日神話の人。

 

「げい」という名前。

 

この「げい」の漢字をみてピンときますね。
羽がふたつ。


鳥が羽を広げて空に舞い上がる意味をもつ。
→弓矢を射る人たち。

 


「廾」さしあげる、ささげる、供する意味。

鳥葬の意味もあるかもしれない。

 

※チベット鳥葬の鷲(『朝拝梅里雪山』より)

 



出羽三山は、葉山が信仰の対象だった「葉」から「羽」に変えている。
それは、この「げい」が関係するからでしょう。
徐福、始皇帝の思想です。

これ、この写真。
「羽人」

 



中国江西省から出土。

玉器で貴族の日常生活で使用された祭器、
礼器で最古の羽人像。

鼻が鷲鼻。

羽人は、神仙思想、不老長寿の仙人を目指す思想で、
西王母という不死の女神(中国)から始まり、
肩に翼をつける人を羽人と言いました。


西王母は導かれて天に昇り、
クンルン山脈に住んでいるのだという。


出羽三山を開山した蜂子皇子は、
ヤタガラスに導かれている。
だから、熊野信仰に深く関わっていること。

 

 

 

太平洋側は、紀州の熊野。
日本海側は、出雲の熊野。

ここが東北の信仰の奥深さ。

 

 

 

 

※湯殿山↑

 

 

 

 

 

 

ワタリガラスと月

 

同じようにシベリアのワタリガラスも月と関わりをもっているのです。

シベリアに伝わるワタリガラスの伝説は、
太陽は父、月は母、
子供はワタリガラスという話がある。


<北西沿岸ネイティブアメリカンの神話>

ある時、ワタリガラスははるか北の島に娘とともに暮らしている年老いた漁師が
月という明るい光を入れた箱を持っていることを知った。

彼はこの不思議なものを手に入れようと思い、
漁師の家の近くの灌木(かんぼく)の葉に姿を変えた。

漁師の娘が木の実を摘みに来たとき、彼女が葉のついた小枝を引っ張ると、
葉は落ちて彼女の体に入った。

やがて子供が生まれたが、まるで鳥のくちばしのような長い鼻を
もった色の黒い少年だった。

少年は這えるようになると、月を欲しがって泣き始めた。

子供があまり激しく泣くので、漁師は子供に光の玉をやったほうがいいと言った。
娘は箱を開けた。

突然、光が部屋を満たし母親は月を取り出して赤ん坊に与えた。
彼は満足そうにそれを抱きしめた。

母親が注意深く聞くと、子供は空の星を見たいのだが、煙の出口の屋根板が邪魔
なのだと言っていることがわかった。

そこで老人が命じて母親に出口を開けさせると、
子供は変身してワタリガラスに戻り、
月をくわえて飛び去った。
彼が山の頂きに降り、空に月を放り投げると、
月はそこにとどまり今のそこを回っている。

 


 

 

ワタリガラスは、
約300万年前、北米の西部に、大型のカラスが生息していた。
現生のワタリガラスの直接の祖先にあたる。

やがてそれが2つに分かれ、
北半球に広く分布する全北区型と、北米西部型が現れた。

 

しかし、一般的なカラス(crow)と
ワタリガラス(raven)の意味は全く異なるため、
ゴミをあさるカラスとは別の善意のカラスと区別されている。

 

 

 

この尾根を歩いて行くと、

月山鍛冶として有名なタタラ場を祀る石垣がある。

 

 

 

 

 

コーカサスからきた記憶がよみがえる。

 

 

朝日連峰

 

 

 

 

 

 

 

 

月山鍛冶跡(稲荷信仰)

 

 

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山頂に登った時は、雲海でした。
標高1980m。


 

高山に登ると、いつも体調がよくなる。
有酸素運動が私に一番あう療法なのです。

 



山頂は、まるで月面着陸をしたような世界。
ほんとに月の世界でした。

この日は、とても賑やかでたくさんの登山客がいました。
山で食べるおにぎりが何よりも贅沢なご褒美。

 

 



山頂から下山する時に、なんと偶然にも目の前にいた
男性が「あ!あれは鳥海山?!」と、突然叫んだのです。

ふりかえると、雲の隙間から鳥海山が!

 

月山山頂(右:月読命を祀る神社)中央に鳥海山

鳥海山と月山のレイラインは同じところにあるんですよ。

 



山頂到着の時は、雲に隠れて何も見えなっかった北側だったが、
帰りにちょっとだけ顔を出してくれました。飛び出すハート

 

 

葉山がみえる

 

 

 

月山神社

 

 

 

アマゾンの月伝説

 

 

アマゾンにも月が死の起源であると伝えている。

アマゾン・オリノコ低地に伝わる死の起源とは、
人間の有限の生命は定まったという。


そのあらかじめ与えられた指示とは、いずれも、
人間の五感で反応すべきものであり、
「味わう」「触れる」「見る」「嗅ぐ」「聴く」

でなければならなかった。

神は、人々に向かって「叫べ」といった。

そして父は大声で人々に呼びかけたが、
蛇や蟹は指示通りに叫んだので脱皮ができ、
美しく生き返ることができた。


しかし、人間はそれに指示通り反応しなかったので、長生きできなかった。
人間がもし指示通りにしていれば、死を経験することはなかったはずだが、
それでは現実の説明ができなくなる。


そのため、一部の神話では、永遠の生を手に入れたが、その人たちは地上とは違う
別のどこかで長命を享受している。


アマゾン流域のピーロ族では、月の神が与える酒を味わえば、
人間は若返るはずだったか、愚かにも気味の悪い酒に手をつけなかった。

しかし、それを飲んだ一部の人は月の世界で暮らす人々となり、
地上には戻ってこない。

 

 

都市伝説のように月の裏側には別の世界があり人が住んでいるという噂がある。

これらも世界神話にあるように、人間が永遠の命でいられる世界を創造したもので、
それを月に託した。

生きる苦しみを解くために、月には永遠の命がある世界を
人は理想とし、月に人が住んでいると創造した。

 


 

太陽は地上に光を指して命を送るもの(父の役目)
終わった魂は月に返しそこで永遠に生きるということ。(母の役目)

 



昼と夜、光と闇の繰り返しは、魂の再生と重ねている。
古くは、エジプト文明にまでさかのぼる。

世界に伝わる月神話は、先住民がもたらしている。
また、川をつくった治水神話へも。

 

 

月山に魅かれるのは、自然の中で永遠の命をもって人は生きていることを
実感できるからだろう。

それは不変であると思わせる力が働いている。
羽人は、地上に来てよかった、という思いがある。

 



出羽三山が求めたヤタガラスの伝説は、
どういう意味があるのかわからないが、
ワタリガラスの話を読むと、近いものがある。

人間はちっぽけだな、
そんなことを想うのだけど、登山に来ている人たちも、
皆がランチをしている姿も幸せ。

このおにぎりだけで十分、長生きできそうだ♪

月なのに、生きるエネルギーをたくさん得られた
素晴らしい月山でした。

 

 

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次は、月山の都市伝説を。

雪の多い真冬、とても不思議な出来事があったそうです。
いまだに謎につつまれた話です。

つづく