さてさて、15日夜の部、その2、でございます。

 

 2幕開演前、袖のバルジャンの出待ち(控え場所)にて

 佐藤さんを隠し撮り f^^;

 

 

札幌公演の千穐楽=2019年公演の大千穐楽を迎えたジャン・バルジャン役の佐藤隆紀さん。

終演後の特別カーテンコールでは、もちろん、大千穐楽公演を終えてのご挨拶がありました。

 

今年の特別カーテンコールは、ユゴーの「Les Miserables」の絵画をモチーフとした幕の前に、バルジャン役が登場してキャスト全員を呼び込む、という形をとっているのですが、今回は、そのバルジャン役、佐藤さんがお一人で千穐楽、ということなので、変則で、現カンパニーで最も長いレミ歴のマダム・テナルディエ/森公美子さんに進行を担当してもらいました。

 

 

まさかの森さん登場に、客席からは「わーっ」とも「きゃーっ」ともつかない声が上がり、下手(舞台向かって左側)寄りに立った森さんが「本日は」と言い始めた声もかき消されそうに。

森さん、しっかり声を張り上げて、

「本日は!ご観劇賜りまして、まことにありがとうございます。マダム・テナルディエ役の森公美子でございます。ありがとうございます。

この『レ・ミゼラブル』でございますが、なんと帝劇では、4月の15日に、ちょうど5ヶ月前に、プレビューからオープン致しました。そして本日、千穐楽を迎える方がいらっしゃいます。あ、感極まってしまって・・・」

手にした白いハンカチで目元をぬぐう森さん。

「5ヶ月に渡り、私たちの中心に居た方でございます。それでは早速、(本日のキャストの)皆さんに登場していただきます。幕、オープン!」

 

森さんの合図で幕が上がり、再び夜の部キャスト全員が登場します。

キャストの中心に居るのは、もちろん、佐藤バルジャンです。

「ご紹介致します。本日、2019年度『レ・ミゼラブル』(涙)・・・大千穐楽を迎えられます、ジャン・バルジャン役の、佐藤隆紀さんです」

規定の進行では、ここで森さんが佐藤さんに、「ご挨拶をお願いします」と促すところなのですが、佐藤さんと森さんで言葉なく見つめ合ってしまい f^^;、

森 「大丈夫?」

佐藤「えっ?もう?いいですか?」

森 「どうぞ、想いの丈を全部、皆さんに(涙)」

佐藤「ありがとうございます(苦笑)」

 

 「想いの丈をどうぞ」の場面

 

 

で、気を取り直して、佐藤バルジャンのご挨拶。

「まずは、本日ご感激頂きまして、本当にありがとうございました。そして、東京公演から始まり、ここ札幌まで支えて下さった全ての皆さまに感謝致します。本当にありがとうございます」

 

 

「自分自身ですね、これだけ長い公演に携わるのは初めてで、まあ、あまりね、こういうところで言う話ではないんですけれども、やっぱり長くやると、多少調子がいい日もあれば、多少調子が悪い日もある」

と、ここで、隣に居たジャベール/伊礼彼方さんが、すーっと近寄り、人差し指を佐藤隆紀さんの口元に寄せて、

「しーっ」

これには、佐藤さんも苦笑です。

 

「けど!けど!悔いは残っていません。反省はあります。反省はあるんですけど、"ここ、こうしていこう“ という反省はあるんですけども、悔いはない。何故かと言うと、その日その日、自分のベストを皆さんの前に出せたな、と、そういう風に思えるから。

たった一つだけ、今日、皆さんの前で自分を褒めたいのは、その部分。みなさんにベストを、毎日毎日、どんな状況でもベストを見せてこれたっていう、そんな自分を、たったひとつだけ、自分自身、皆さんの前で褒めさせて下さい」

 

佐藤さんは時に涙をのみ、震える声をしぼり出すように、言葉を紡ぎ、少し照れたように「あっはっは」と笑うと、

「でも、こういう気持ちにさせてくれる、このバルジャンに挑ませてもらう、そういう気持ちになるには、いろんな皆さんから、言葉がありました。

あの、自分にとっては恥ずかしい話しなんですけども・・・(言葉をくれた)皆さんの熱い想いを、(お客様にも)ちょっとでも解ってもらえたらいいな、と思って、少しだけ話したいなと思います」

 

佐藤さんが語ったのは、自分の中で特に強く印象に残っているエピソード、3つ、でした。

 

ひとつめが、

「バルジャン(を演じること)が決まって、(出演決定が)発表される前、今回札幌には来てないんですけども、駒田一さんという、テナルディエ役の方に、ですね、

"いやぁ、シュガー[=佐藤さんの愛称]、楽しみだね、シュガーのバルジャン!" 

って言われた時に、僕もう、すごく不安しかなくて、

"いやもう、駒田さん、(僕は)不安で、不安で。もう毎日、心配で。いやもう、あぁ・・・" 

って返したんですよ。そしたら駒田さんが、

"何言ってんだよ、シュガー! 何だよ、その気持ちは! そんな気持ちでバルジャンが務まると思うなよ!!・・・なーんちゃって"

って、言ったんですね。

けどその、最初にバーっと怒ってくれた時の(涙)駒田さんの目は・・・すごく熱い目・・・してたんですよ。そこに偽りはない目をしてました。

"あぁ、こんな気持ちじゃいけないんだな"

って。駒田さんは、僕の気持ち考えて、"なーんちゃって" って言ってくれたけど、けど、そんな気持ちでこの役と向き合っちゃいけないし、この役だけじゃなくて、役者としてね、役に向き合うってことの本質みたいなものを、まず、始まる前に教えてもらいました」

 

それでも不安で、やっぱり、大丈夫かな、って思っていた佐藤さんでしたが、

「最初の歌稽古の日、これはキャストには話したことあるんですけども、不安を抱えながら列に並んで。みんなこう、椅子に座って歌稽古するんですけど、僕、一番前で、自分のシーンじゃないとこで座ってて、(後ろのキャストを振り返りながら)皆さんがバンっと後ろから歌われた時の音圧、そしてあの、何て言うんですかね・・・エネルギー、を感じた時に、

"あぁ、こんな弱気じゃダメだ"

と。もっとこう、こんな素晴らしい皆さんの中で、自分がバルジャンを演じるんだっていう自覚みたいなものを(涙)、皆さんの声から教えてもらいました。ホントに感謝してます」

 

 何度もぐっと涙をこらえ、話を続けた佐藤バルジャン

 途中、伊礼ジャベールが、「よし、よし」とでも言うかの

 ように、佐藤さんの頭をポンポンっと

 

 

3つめは、

「これも、なかなかないことなんですけども・・・。

最初に "悔いはないんですけども、反省はある" と言ったように、やっぱり、調子が良い日もあれば、悪い日もあるんですね f^^;。けど、それなりに、その日のベストを尽くして頑張ってた、ある日の公演。

公演が終わって袖に戻ると、舞台監督の方が、すすすーっと寄って来まして、"何を言うのかなぁ" と思ったら・・・普通ね、気を遣って、

"大丈夫だよ、やれてる、やれてる。落ち着いて頑張って"

とかっていう、そういう言葉が来るのかな、と思ったら、

"シュガー! 何だよ、今日のバルジャンは! 頼むよ! 魂の叫びにもなってねぇじゃねぇか!"

って言われたんですよ。僕は、ホントにこの一言が(涙)嬉しくて。本気なんだな、ってすごく感じたんですね。キャストだけじゃなくてスタッフも、こうやって役者に、本気でホントの気持ちをぶつけてくれるってね、なかなかないんですよ。その日はね、さくっとやってた部分もあるんです 、正直ねf^^;。けど、

"こんな気持ちじゃダメだ!"

と。ホントに響いた。いろんな方に、もうね、芝居いろいろアドバイスくれたり、バルジャンの先輩方も色々アドバイスくれたり、ホントに諸先輩方、色々アドバイスくれたり、ね。後輩たちと話してても、ホントに熱い想いを持ってるんだなっていうのが解って。

ホントに皆、『レ・ミゼラブル』を愛してるから、こうしてここまで、この演目は続いて来たし、こうして精度を上げて、どんどん良くなってるんだな、って凄く感じました。

今日は、僕の言葉として(ではありますが)、(ご観劇の)皆さんに、これだけ『レ・ミゼラブル』、キャスト、スタッフ、そしてオーケストラの皆さんも、みんな本気で、この舞台を創ってるんだっていうのを、最後に僕は、お伝えしたいな、と思って。

この『レ・ミゼラブル』に関わる全ての皆さんに、心から感謝します。こうして成長させていただけたこと、ホントに幸せに思います。最後は "ありがとうございました" を、歌声のロングトーンに載せて、終わりたいと思います」

 

みなさん、本当に、ありがとうございました〜〜〜〜♪

(と、両手を広げて朗々と詠う佐藤バルジャン ↓ )

 

 

最後に森さんが、

「『レ・ミゼラブル』は、2021年度に再演が決まっております。ただし、誰が出るかは、まだ解りません」

と、ちょっとしんみりモードに入っていたお客様を盛り上げます。

「これからオーディションがあるわけなんでございますけれども、皆さん、アンケート用紙なんかあると思うんですが、そこで是非、みなさんの熱い想いを語っていただければ、また、札幌公演が実現するかもしれませんので。

どうぞ皆さん、よろしくお願い致します。今回、ホントに完売になるのが早くて早くて。もっとあの、札幌に長く居たかったんですけどね。残念ながら、明後日で終わってしまいます。

是非、皆さん、もう一度、レミゼラブルを札幌に呼んで下さい!

本日はまことにありがとうございました!」

と締めて、カーテンコールの幕が降りました。

 

[ムラタ註:札幌公演では、ご来場のお客様にアンケート用紙のお渡しをしておりません。ご意見・ご要望などございましたら、札幌公演の主催者さまにお手紙やメールなどでお伝えいただけますと幸いです]

 

 

 終演後の佐藤バルジャン

 「みなさん、ありがとうございました!」

 

 

 夜の部出演者で、記念写真です!

 

 

 もひとつ、終演後の記念ショット

 左から生田絵梨花コゼット、佐藤バルジャン、昆夏美

 エポニーヌ

 

 

残りは16日昼、17日昼の2回。

「レ・ミゼラブル」カンパニー、最後まで駆け抜けます!