この木金と、遅い夏休みをもらえたので、旭岳温泉♨️に母と2人で行ってきた。
母と温泉旅行なんて、考えてみたら乳がんを患ってから初めてか。多分、一緒にお風呂に入ることは、母にとっては結構ショッキングだったに違いない。なーんてね、

平日で天気もあまり良くないので、旭岳界隈はとても静かで、時間がいつもよりゆっくり流れてるような感じ。

宿は古くからある源泉豊富な極上の温泉と、蛇口からは全て湧き水という贅沢。食事も、いわゆるお膳がドドーンと並んでるスタイルではなくて、地元の食材をふんだんに使ったお料理を、一品一品ゆっくり出してくれる。
一泊で帰ってくるのがもったいない、山小屋風の素敵な宿だった。
何しろお湯がとても素晴らしい。
揚げたてコロッケは熱々サクサク
トマトのコンポート、まるでデザートみたい。
湧き水のゼリーに黒蜜をかけて。これは母がすっかり気に入った様子。

温泉には、3回入った。
コロナ対策で宿泊者数を抑えているせいか、どの時間に入っても、とても空いていて、そしてこの宿のコンセプトで浴場のライトがいい感じに控えめで、手術跡をあんまり気にせず入ることができた。

故に、母にしてみれば、私が随分あっけらかんと風呂に入っていると見えたようだ。よしよし。実際、あっけらかんと入っていたしね。

傷口は相変わらず赤く目立つけど、薄暗い浴室で、湯煙に巻かれ、老眼もあり、多分安心してくれたと思う。

お部屋で2人でテレビを観ながらあれこれお喋りして、しとしと降る雨音を聞きつつ翌日の天気を祈りながら床に着いた。

翌朝、窓の外を見ながら、雨は降ってないけど…ガスってるよね…と母が呟く。どうなんだろう、最近は脚力の衰えをことさら強調し、もう登れないなんて言う母。もしかして、天気が悪いことでむしろ安心してるのかなぁ。

何度も何度も窓の外を見ては、お天気は仕方ないよね、なんて繰り返す。

宿泊者の休憩スペースには、山の本や写真集があり、コーヒーを飲みながら過ごせる。朝食後、ゆっくり山小屋の雰囲気を味わった。

部屋に戻りチェックアウトの支度をしているうちに、少し空が明るくなっていた。
隙間に小さな青空も見える。
なんだか弱気な母に、言ってみる。
「せっかく雨が上がったから、とりあえずロープウェイで上に行こうよ。歩けたら歩けばいいし、ダメなら戻ればいいし。旭岳に登るわけじゃないんだしさ。」
母は、少し吹っ切れたみたいな顔で同意してくれた。

登山靴を履いてロープウェイに乗って山へ。気温が高い影響からか、例年なら紅葉🍁の時期なのにまだほとんど色付いてなかい。
平日ということもあり、登山者は数えるくらいしかいない。しかも、裾合平方面に行く人は誰もいなかった。熊よけの鈴を良く鳴る位置に付け直し、母にポールを持たせて出発。中岳温泉分岐まで行って、母も食べてみたいというカレーメシを食べて帰ってくるコース。登りはほとんどない。
誰もいない静かな道。案外ガスが高く、気持ちの良い景色。
ちょいちょい休憩しながらゆっくり歩き、2キロくらい進んだところで、前方に熊が。
えっ、結構意識して鈴を鳴らしてたし、話し声も大きめにしてたんだけど…熊さん全然こちらに気付かず何かを食べている。スマホの写真だとちっちゃくて分かりづらいかな。
そのまま、そーっと回れ右して引き返した。

もう少し歩きたかったけど、仕方ない。
ここのところ頻繁に出てるらしいし、本当にひと気のない日だったから、羆も安心してハイマツの実でも食べてたんだろう。

この日は母と一緒でよかった。母のために落ち着いて行動できた。1人ならちょっと、いや、かなり心細くて慌ててしまったに違いない。

母は動揺と興奮であからさまに歩調が上がってしまい、脚がつってたにも関わらず歩き続け一度コケた。うまく立ち上がれず、体を支えてあげた時、とても華奢な身体にドキッとした。

帰宅後に湿布を貼ってあげたとき、膝を少し擦りむいていたことをやっと白状した。

楽しくてエキサイティングな二人旅、思い出深い休暇になった。



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