はじめまして。透子です。
この話を、ずっと書けずにいました。
書いてしまったら、自分がどんな人間だったのか、全部ばれてしまう気がしていたからです。
私はこれまでの人生で、何度も人を傷つけました。
傷つけられたこともあります。
嘘もつきました。逃げたこともあります。
それでも誰かを愛して、結婚して、母になりました。
たぶん今の私は、どこにでもいる普通の母親に見えると思います。
でも心の中には、誰にも話してこなかった過去があります。
その中でも、どうしても忘れられない夜があります。
彼を空港まで送った夜のことです。
あれは夏でした。
彼は東京へ研修に行くことになっていて、私は自分の車で空港まで送っていきました。夜の空港は静かで、車の中では他愛のない話をしていたように思います。
その少し前、私はやっとある決心をしていました。
自分の家族に、彼を紹介しよう。
ちゃんと前に進もう。
そう思っていたのです。
ここまで来るのに、私は本当に時間がかかりました。
好きなのに、結婚に踏み出すのが怖かった。
過去のこと、自分の家族のこと、自分自身の弱さ。いろいろなものが引っかかって、私はいつも肝心なところで立ち止まってしまう人間でした。
それでもその年の夏、私はようやく腹をくくったのです。
この人ときちんと向き合おう、と。
空港で別れたあと、彼からLINEが来ました。
「今日は疲れたから早く寝るね。おやすみ」
私は何も疑いませんでした。
というより、疑いたくありませんでした。
やっとここまで来たのだから、もう余計な不安に振り回されるのはやめようと思っていたのです。
でも、その夜。
彼は東京で、別の女性と会っていました。
しかもその相手は、私がずっと嫌な予感を抱いていた女性でした。
あとからそのことを知ったとき、私はショックを受けるより先に、どこかで「やっぱり」と思ってしまいました。
心のどこかで、ずっと不安だったからです。
そして同時に、こうも思いました。
ああ、これが因果応報なのかもしれない、と。
自分がしてきたことは、いつか自分に返ってくる。
そんな言葉を、ただのことわざのように聞いていた頃もありました。
でもあのときの私は、それを現実として受け止めていました。
なぜなら私は、ただ裏切られたかわいそうな女ではなかったからです。
むしろその前に、私自身が誰かを傷つけていました。
弱くて、ずるくて、本当のことを言えなくて、たくさんの人を巻き込んできました。
だからこのブログでは、自分を被害者のように書くつもりはありません。
誰かを一方的に悪者にしたいわけでもありません。
ただ、あの頃の私は何を選んで、何をごまかして、どうしてこんなところまで来てしまったのか。
それを一度、自分の言葉でたどり直してみたくなったのです。
今の私は結婚していて、娘もいます。
毎日の生活があって、やることに追われて、過去のことなんてもう忘れたような顔で暮らしています。
でも、本当は忘れていません。
ふとした時に、昔の自分が顔を出します。
どうしてあの時、ちゃんと向き合えなかったんだろう。
どうして私はいつも、苦しくなるまで本当のことを言えなかったんだろう。
そんなふうに思うことがあります。
思えば、その始まりは高校生の頃からだったのかもしれません。
あの頃の私は、クラスの中でうまくやっているつもりでした。
でも本当は、全然うまくやれていませんでした。
周りには人がいるのに、心から友達だと思える人はいない。
みんなが恋愛の話で盛り上がっているのを見て、自分も合わせなきゃと思うのに、どうしてもなじめない。
私はずっと、少しだけみんなとずれているような気がしていました。
それでもそのずれを認めるのが怖くて、平気なふりをしていました。
笑って、合わせて、なんとなくその場をやり過ごしていました。
たぶん私の人生は、その頃からずっと同じことの繰り返しだったのだと思います。
苦しいのに平気なふりをする。
本当のことを言えずにごまかす。
そしてあとから、その代償を大きく払う。
あの夜、空港まで彼を送った私も、きっとそうでした。
何かがおかしいと、心のどこかで気づいていたのに。
見ないふりをしていたのです。
次回は、高校生の頃の話から書いていこうと思います。
友達がいるようで、どこかずっとひとりだった、あの頃のことを。
