晴

 寒暖計五十度(注・=摂氏10度)

 

 

[京都帝大総長と教授の衝突]

 京都帝国大学法科教授連と総長との間に意見の衝突ありて教授連は総辞職を発表せり、其衝突の主因は、教授連は総長が教授の任免を為すに当つては予め教授会の決議を経べしと云ふにあり、然るに総長はもちろん教授等の意見を尊重すべしと雖も其決議に依りて教授の任免を決すると云ふに至りては理論上同意する能はずと云ふ、実行の上に於ては何程の差違もなき事なり、兎角学者の喧嘩は斯くの如き理論に偏するもの多し、笑止千万と云ふべし。

 

 田中親美来宅、白紙庵壁張りの下図を持参し、今井経師屋と立会の上実地に就き種々研究して来る二十日より張付けに取掛る筈なり。

 

 夕刻より岩原謙三氏の新喜楽に催したつ新年宴会に赴く、伊藤博邦公、三井源之助、同養之助、有賀長文、福井菊三郎氏来会、種々の余興あり、夜分帰宅す。

 

[伊東祐享元帥薨去]

 伊東元帥薨去す。余は生前元帥と親交なし、唯水戸の人海軍主計総監桜孝太郎氏が元帥の実兄祐麿子(爵)の婿たるを以て、其婚儀披露の際一回寒暖の挨拶を交換せし事あり。元帥は躰躯偉大にして愛想好く、薩摩人に特有なる人に対して馴々しき物言ひ振りを認めたるのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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