月曜日

 雨 寒暖計五十度(注・=摂氏10度)

 

郷誠之助男(爵)より電話にて、自家に出入する文人茶器商本山豊実を成るべく今度同家入札会札元に加入せしめたき旨申し来りたれば、已に八人の札元と定めたれども本山と外に池田慶次郎を加へて十人と為し、此上は絶対に増加を拒絶すべしと云ふに決せり。

 

[仲選居茶会の末客]

 京都の土橋嘉兵衛来宅、郷男(爵)入札会札元と為りたる謝礼の為めなり。先般京都に於て彼が連日開催したる仲選居新築披き茶会に参会の客が様々の客振を示したる模様を語りけるが、彼の談話は樸訥中に頗る趣味あり。高谷恒太郎正客、芝川又右衛門、嘉納治郎右衛門、同治兵衛四人去る二十七日来会の節は、服部七兵衛が末客を勤むる筈なりしに差支ありて出席せざりしが為め、白鶴主人嘉納治兵衛が末客と為り大にお詰振を現はしたる後、彼は藤田平五郎男(爵)の茶会に於て住友男(爵)、本山彦一、其他の客組の正客を勤めたるを以て、道具屋なる土橋方にては末客と為り藤田男(爵)の茶会にては正客と為り、是れにて始めて相殺する事を得たりと云ふ文意にて大天狗の一書を送りたるより、此手紙を金襴表具と為して来春茶会に白鶴主人を招ぎ彼に一驚を喫せしむる考案なりなどと語り居れり。

 

 古稀庵紅葉上、中、下三篇を時事新報に送る。

 

 精藝社主和田幹男氏を招き郷誠之助男(爵)蔵器入札目録調整の事を委嘱す。猶ほ酒井忠道伯茶器撮影の件は、本年余日なく到底実行する能はざれば来春着手すべき事と為し、酒井家の許可を得るに就ては和田氏厳父維四郎氏を煩はしと言ひ出でたるに、幹男氏は委細承諾、老父をして早速酒井家に談判せしむべしと言ひ居れり。

 

 午後五時、清元稽古所に赴き夕霧下の巻を稽古す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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