夏の遅い午後、汗を拭きながら山道を歩く私と弟。
私達は2人そろって長い事会っていない母を捜してこの山奥の村へやってきた。
7年も前から年に1度だけ2人に母から届くバースデーカード。
そこには差出人の住所はいつもなかった。
2人がここへやってきたのは母からのカードの消印と2人がある日見た夢のせい。
夏の暑い日曜日キッチンで方針状態の弟。
私も変な夢を見た後だったので彼と一緒にテーブルに座ってボーっとすること小一時間。
「俺、変な夢みちゃったよ。」と弟。
「私もなんか変な夢みた。」と私。
「お母さんの夢。」と2人同時に。
驚いて顔を見合わせた私達は詳しく夢について語り合う。
結果、2人が見た夢はまるで一緒に映画でもみたかのように同じもの。
2人で顔を見合わせてニッコリ笑い合うと私達は急いで身支度を整えた。
数時間後2人母からのカードを1枚と消印からたどった地域の地図を片手に駅にいた。
「それにしてもすごい田舎だなー。」と弟。
「お母さん、田舎好きだったもんね。」と私。
驚くべき事なのだが2人はただただ電車を乗り継いである村までやってきた。
行き先も降りるべき駅も全く知らないはずなのに2人はどこで降りるべきなのか分っていた。
それを2人して不思議がったりもしないくらい。
それは2人にとってそれくらい自然な事だったから。
感覚としては・・・
毎年夏に通った親類の田舎へ記憶をたよりにたどり着く感じ。
あぜ道、山道を抜けてちょっとした高台に出る。
2人は再び顔を見合わせる。
「もうすぐ、だよね。確かそこを曲がると・・・。白い・・・」
と言いながら小さなお寺の石垣を曲がる。
2人の脳裏に蘇る夢。
古い白壁の大きな日本家屋
田舎の深い山の奥の農家の風景。
山の際。
もしかしたら途中野菜畑があったかもしれない。
初めてやってくる土地なのにとても懐かしい感じがする。
古い白壁の大きな日本家屋。
弟と2人でその家にいると分かっている母を訪ねる。
引き戸の玄関をあけて、中に立つ母をみる。会話は覚えていない。
ただ2人が分かっている事はその家の中に一歩足を踏み入れたら最後もう外へは戻れないという事。
母の顔を見て、その日本家屋を後にする。
家をくるっとまわる格好でもと来た道を戻る二人。
母を心配している2人。
そのあたりの入り口のような場所へ2人で戻る。
私だけがやっぱり母の居る家へ戻ると引き返す。
夢と同じ白い家を見つけた。
いよいよだ。
白い家の門をくぐる。
白い家の玄関の前に立つ2人。
引き戸に手を。
ガラガラと音をたてて戸を開くとそこには懐かしい母の姿が。
一瞬真っ白な光が当たりを包んだ。
意識が遠くなっていく2人。
ふと気がつくとベッドの横の時計は午前10時。
今日も暑い日になりそうだ。
キッチンにいくと放心状態の弟。
私も変な夢を見た。