先日夫(いなり)が名古屋出張で常滑焼き(とこなめやき)の急須を買ってきた話をしましたが、今日はその急須についてお話しします。

我家では夫婦そろって茶飲みです。
緑茶は実家に帰った時に1キロパックをもらってきます。実家には嬉野(うれしの)のお茶屋さんが自宅まで配達してくれます。大切な緑茶なのでできるだけおいしく飲みたいというのが人情ですが、シドニーの水は悪くはないけど、実家の水(田舎なので)とは比べ物にならない。それで、急須だけは、お茶が一番おいしくなるという常滑焼きの急須をこれまた実家からもらってきている。実は三代目なのだけど、前の二つは落として割ってしまった。この三代目が最近そそぎが悪くなって、一杯いれるのに五分くらいかかる。掃除とかいろいろ手は尽しても結果は変わらない。これじゃあ、待てないということで、名古屋に行く夫についでに買ってきてもらうことにしたのです。

常滑は中部国際空港のすぐ前の駅で、とーふ自身これまで何十回と通ってはいるのだけれど、空港の前で荷物を持ったまま降りるのはやっかいなため、一度も行った事がない所なのです。

今回いなりは唯一の休みの日曜に行く予定だったのが、体調が悪くて行けなかった。それで、翌週の金曜日に半日休んで行ってきたという。しかし、金曜日なのにほとんどの店が閉まっていたというのは、いったい?不況で土日しか店をあけないのか?
で、開いている数少ない店と資料館兼販売所みたいなところを回って、悩んだ末買ってきた。

この写真は、最後に行った資料館みたいなところの展示。
常滑焼きは赤茶色の焼きが特徴なのだけれど、最近は黒っぽい物や光るものもあるらしい。
さすらいのとーふ-常滑



デザイナーの夫は、見た目にかなりこだわるので悪い物は買って来ないとは思っていた。
しかし、機能もしっかり見ている。いなりの説明によると、急須の等級は「茶こしの作りによって決まる」だそうだ。茶こしとは急須の中の注ぎ口の穴にかけられた網の部分を言う。この茶こしの素材と作りに段階があるのだそうだ。下から順に素材ではプラスチック、金属、焼物。作りでは、部分付け、全体付け、急須と一体になっているものがある。これは、お店で説明を聞いた訳ではない、日本語のわからないいなりが自分で観察して得た結果だと自慢げに言う。

どれを買ってきたかは、もうお分かりと思う。
素材も作りも一番上の、急須本体に作り付けになった茶こし付きのものである。
しかもこの小さな穴の開け方にも等級があるらしい。機械で開けたもの、手で開けたもの、あらかじめ穴を開けた茶こしを後で本体にくっつけたもの、本体といっしょに作った茶こしに後から一つ一つ手で穴を開けたもの。いなりが選んだのは、もちろん最後のもの。急須の内側から穴を開けているので、一つ一つの穴の内側が広く外側が狭くなっている構造で、茶っぱが出ないのだ。

これが手で開けた穴だとは、ちょっと信じ難い。神業ともいうべきか。
さすらいのとーふ-穴


で、本体はといえば、これが非常に軽い。片手で楽に注げる重さである。
白い茶碗は今年波佐見(はさみ)で買った一真釜のもの。お茶の色がきれいに映える。
さすらいのとーふ-急須


そして、肝腎な注ぎであるが、これがまるで夢のような滑らかさ。
「音無の注ぎ」とでもいうか、出ているかいないか分らないくらいの静かさと滑らかさ。刻々と手に伝わる重さがなくなっていく感覚だけで、お茶が出て行くのがわかるという素晴らしいもの。

さすらいのとーふ-そそぎ


今までの、ポトポト注ぎと比べるのももったいないような、急須の名刀村雨とも言うべき代物。
一人暮らしのとーふがこれを独り占めするのは、なんという贅沢か・・・・





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ついでに、常滑焼きで思い出した話があるので追加します。

学生時代、国語科専攻だったとーふ、クラスは12人しかいなかったので、自然全員と親しくなるわけなのだけど、一級下の男子で下宿生の子がいて、若者なのに常滑焼きの急須でお茶を淹れるのが一番おいしいなどと言っていたことがある。そのころのとーふは無知で、あんなダサイ急須でお茶を飲むなんて、なんて老成した学生だろうと思った。それが今では、わざわざ人に頼んで買ってきてもらうほどなのだから。

その人の下宿先の大家さんはおじいさんで、部屋でくつろいでいるとお茶菓子など持って来るので、お茶を淹れておじいさんと18-9の学生が世間話をすることがよくあったというのだ。今ではあり得ない下宿屋の話だと思うけど、そういう時代たったのだな。
あのなつかしいS君は今はどうしているやら・・・・