 |
| スカイプを使い、フィリピン人講師のレッスンを受ける「格安オンライン英会話スクール」が人気となっている。その実力を検証した。 |
ビジネスマンに英語力が求められている。そこで、スカイプを使って、フィリピン人の講師からレッスンを受けられる、格安のオンライン英会話へのニーズが急上昇──。その実力を探った。
【詳細画像または表】
多くの社会人に英語力向上というプレッシャーがかかっている。楽天やファーストリテイリングが、社内の公用語を英語にするといった状況もあって、仕事で欠かせなくなってきた英会話を学ぶ人が急増しているのだ。
そこで人気を高めているのが、忙しい社会人でも自宅で手軽に受講できる、インターネットを利用したオンライン英会話だ。ブロードバンド環境が普及し、新規に参入する業者が増えたこともあり、「今まで英会話学校に通っていなかった層が多く利用し始めている」(イーオン)という。
現在、オンライン英会話は、大きく3つに分類できる。
1つ目は、従来から英会話スクールを運営している「ECC」や「イーオン」などの大手が、独自ソフトを使った動画や音声でスクールと同じレッスン内容をネット上で学べるようにしたもの。日本に住んでいる英語ネイティブの講師がマンツーマンで教えてくれる。イーオンでは02年からサービスを提供しているが、当初は教室が開設されていない地域向けの事業だった。1レッスン当たりの単価は数千円と高いものの、現在では、都市部在住で教室に通う時間のない人にも多く利用されている。また、使用する専用ソフトの動作確認なども含めて、日本人スタッフによるきめ細かい電話サポートが充実しているのも特徴。パソコンの操作に不安がある人にも配慮する。
ネイティブ講師でもグループレッスンだと物足りない!?
2つ目は、英語ネイティブの講師からグループレッスンで英会話を学べるタイプ。大手業者が教室で行うプライベートレッスンと比べると、授業料は10分の1程度とかなり安い。10年前からサービスを提供している「イングリッシュタウン」をはじめ、昨年には「ECC」や「アルク」と「NTTラーニングシステムズ」も参入した。各社とも「生徒の真剣度は高まっている。間違いなく追い風」(イングリッシュタウン)、「会員は毎月倍々で増加」(NTTラーニングシステムズ)と手応えを感じている。手頃な料金で、ネイティブに教わりたいというニーズをつかんでいるようだ。
実際に記者が試したところ、1回の時間は長いが、自分に当たる時間は短く、物足りなく感じた。時間が自由になるなら、生徒数の少ない時間帯を狙って受講したほうが効果は出そうだ。また、レッスンで話すテーマが決まっているため、興味の持てないジャンルでは意欲が湧きにくいこともあった。英語は格安スクールのフィリピン人講師よりやや聞き取りやすく感じたため、ネイティブの講師からレッスンを受けることを優先するかどうかが、選択のポイントになりそうだ。
また、特にイングリッシュタウンは、ヒアリング、スピーキング、文法、ボキャブラリーなどの自習教材の質や量が優れている。時間をかけて基礎から学習したい人向きだ。
マンツーマンでも月数千円の「格安スクール」
3つ目は新たに急増しているタイプ。無料の通話ソフト「スカイプ」を使って、フィリピン人講師からプライベートレッスンを受けられる格安スクールだ。最大手の「レアジョブ」は1月に登録者数が5万人を超え、「ラングリッチ」は「1月末までの3カ月で登録会員数が3倍以上になった」と急成長が続いている。利用者は幼稚園児、小学生から80代までと幅広いが、中心は20~40代。男女比はやや女性が多めだ。
格安スクールは、マンツーマンで毎日話せて、月謝は数千円というシステムが多い。まとめて何十万円も支払って英会話学校に通うことを考えると、はるかに安い。安さの理由は人件費だ。実は、英会話スクールの経費のうち、約半分は講師の人件費だといわれている。「一般の英会話学校と比べると、フィリピン人講師の人件費は5分の1~10分の1程度で済む」(オンライン英会話関係者)。加えて、スカイプを使うことで、通信費やソフト開発費などがかからないのも大きい。
はたして、格安スクールの実力はどれほどのものなのか——。TOEICで満点を取った経験のある英語習得コーチの松本秀幸氏に試してもらった。
試して分かった、格安スクールの“実力”
格安スクールでまず気になるのは、講師のレベルだろう。だが、「イギリス英語とアメリカ英語の発音が混在していると指摘された。また間違った文法は、スカイプのチャット機能で直された」(松本氏)といい、講師のレベルは、予想以上に高かった。安くても一定のレベルを満たしていると考えてよさそうだ。
また、格安スクールのなかでも、コースやテキストにかなり差があった。QQイングリッシュは「カリキュラムなしに、上達はあり得ない」と言うだけあって、カリキュラムが豊富。ラングリッチもテキストが充実していて、初心者でもスムーズにレッスンに入れた。
テキストなどがなく、フリーで会話するスタイルなのが「ぐんぐん英会話」。月額6000円で1日2回まで受講できるので、とにかく英語でたくさん話したいという人に向いている。ある程度の英語力があるなら、自分の考えを表現する練習にも活用できる。
いずれのレッスンも25分間があっという間に過ぎた。疲れすぎることもなく、予習・復習に時間を割くこともできそうだ。どのスクールも全般的に明るい講師が多く、こちらが言葉に詰まったときには励ましてくれるなど、楽しくレッスンを受けられた。
レッスンの予約は5~30分前まで可能だが、曜日や時間帯によっては直前では予約できないこともあった。平日の21時以降は利用者が多い時間帯のため、帰宅してからレッスンを受けるのなら、会社を出るときに予約するなど、少し時間に余裕を持ったほうがいい。
講師、教材の質が高く、カリキュラム充実[QQイングリッシュ]
ビジネス英会話、日常英会話などの他、通常の4倍の早さで英語を習得できるカランメソッドなど、カリキュラムが充実している。教材もよくできていて、講師の質も高い。レッスン単価は497円と高いが、忙しくて週2回程度しか受けられない人は実質的にQQイングリッシュのほうが安く済む。
講師と独自の教材がハイレベルで学びやすい[ラングリッチ]
講師がしっかりトレーニングされている印象を受けた。褒め上手で、てきぱきと授業が進み、学習しやすかった。カリキュラムがテキストレッスン、発音レッスン、ニュースレッスンの3つに決まっているので選びやすい。深夜1時までやっているので、帰りの遅いビジネスマンでも使い勝手がいい。
目的に合わせて教材を選べる[レアジョブ]
無料教材が各種用意されていて充実。ユーザーが使用したい教材を指定できるので、学びたいことが明確な人に向く。レッスンは教材に沿って進められた。講師は大学生、大学院生が中心で、プロらしさはあまり感じられなかった。
フリートークが激安[ぐんぐん英会話]
特に教材やカリキュラムなどは用意されていない。ある程度英語力があり、会話の練習をしたい人向き。講師はフレンドリーでプロらしさは感じられなかった。発音や文法の修正などはほとんどされないが、気軽に会話できる。
やってみてわかった業者選び7つのポイント
POINT
予約の取りやすさ
POINT
講師の選びやすさ
POINT
教材の質
POINT
グループレッスンかプライベートか
POINT
講習を受けられる時間帯
POINT
講師の質
POINT
サポート体制
講師の供給を維持できるのか
少ない資金で始められて参入障壁の低いオンライン英会話は、英会話ブームを背景に現在90社以上が乱立。「すでにフィリピン人講師の争奪戦が始まっている」と言う関係者もいる。実際、マスメディアに取り上げられて生徒が急増したスクールでは、講師の増員が間に合わず、新規の会員登録を停止したケースも見られる。
こうした状況でも、講師のレベルを一定以上に保てる理由をラングリッチはこう説明する。「もともとフィリピンには英会話学校が多数ある。欧米に留学するよりも安い費用で済むため、英会話を学びにくる留学生も多い」。外国人に英会話を教えることに慣れている講師経験者を中心に採用しているのが、ラングリッチやQQイングリッシュだ。最近は、現地の英会話学校や韓国資本のオンライン英会話スクールから、給与の高い日本資本のオンライン英会話へと多くの人材が移り始めており「当面は優秀な講師の供給に不安はない」(ラングリッチ)と言い切る。
一方、約1800人のフィリピン人講師を抱えるレアジョブでは、有名大学であるフィリピン大学の学生や卒業生だけを講師に採用してきた。「教育レベルの高さと英語力は比例する」(レアジョブ)といい、高学歴者のなかから、一定のレベルをクリアした人材を採用することで、質を担保してきたのだ。ただし、最近の受講者数急増を受けて、フィリピン大学以外の学生・出身者の講師採用も始めている。講師のレベルの維持が今後の課題になりそうだ。
格安スクールを活用して英語を上達するには、隙間時間も活用し、できるだけ回数をこなしてアウトプットの経験を積むのがコツ。松本氏は言う。「英会話学校に数十万円の授業料を払って通おうと思っているなら、格安のオンライン英会話で学習のペースをつくっていくことを勧める。オンラインで続かないようなら、通学も続かない」。格安スクールにもそれぞれ特徴があるので、無料の体験レッスンを通じて、自分の目的に合ったスクールを選ぶのが第一歩だ。
今回、いろいろなスクールを試したが、毎日生きた英語表現に触れることで、英語力が自然とアップしていく手応えがあった。気軽に毎日練習を続けられることこそが、格安スクールのメリットではないだろうか。
オンライン英会話の選び方・使い方
目的に合ったサービスを選ぶ
TOEICの得点アップ、会議での会話力アップなど、学ぶ目的に合ったカリキュラムやコースのあるスクールを選択する。特に初心者にはカリキュラムの充実しているスクールが使いやすい。
体験レッスンを積極的に利用
目的や自分のレベルに合っているか、教材の内容や講師の教え方などを知るには、体験レッスンが必須。複数のスクールの体験レッスンを受けることで、比較すべき点が見えてくる。
フリートークをうまく活用する
自己紹介やプレゼンテーション、自社製品の説明などの練習に利用できる。レッスンの場で適切な表現に直してもらったり、不自然な発音を指摘してもらえて、実践的な力が身に付く。
(文/根本 佳子・写真/山本 琢磨)
【関連記事】
“省エネ”だけでは判断できない、「サマータイム」の有効性
同じ過ちを「四度」繰り返さないために「いざ、三陸の高台へ」
「自粛ブーム」に異論! 普段どおりに楽しもう
東日本大震災の被災地を見る
どうするペットのリスクヘッジ! 備え・訓練・心構えとは
「この記事の著作権は nikkei TRENDYnet に帰属します。」