球憶~一章~ | 水も滴るいい頭

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一章 思い出





浩一郎が野球を初めて見たのは、地元の球場で行われていた高校野球選手権大会地方大会だった。
何も知らなかった、当時五歳の浩一郎はただただブラスバンドの応援に聞き入っていた。
彼の父「敏晃」は、必死に野球を見させようとするが浩一郎は反応しない。

そんなとき、それは起きた。

打球が外野に上がり伸びていく。誰もが長打を確信したとき…。
「ドンッ」
センターがフェンスに激突。
球場全体が静まり返り、激突したセンターを仲間のライトが起こすと…。
グローブの中にはボールが…。
「ワーッ!!!!」
守備側の応援席は、狂喜乱舞。
実は、それが起きたのは9回の裏ツーアウト2塁の場面で、抜ければ同点。かつピッチャーも疲労困憊で、守備側に勝ち目は少なかった。
そんな場面で危険を省みずフェンスに突っ込むのは、高校野球ならではである。

浩一郎はそれを見て息をのんだ。
そして、
「野球やりたい!!」
そう思ったのだ。



時がすぎて、浩一郎は中学に入学。念願の野球部にも入った。
学校は部活が盛んだったが、決して強くなかった。
それでも、野球初心者の浩一郎にとっては何もかもが新鮮で辛いときもあったが、とにかく楽しかった。

「永松。お前、希望のポジションはあるか?」
監督に聞かれ、迷わずこう答えた。
「はいビックリマーク外野手です!!」


中学一年の夏がすぎ、代も変わって最初の練習試合の二試合目。
浩一郎は初めてスタメンで出場した。
彼は小学生のときから足が速く中学でも健在だった。

二打席目。正直サインがよく分からなかったのだが、なんとなくバスターをしてみた。
すると、直球を見事に弾き返しセンター前へ。キレイなヒットのはずだった。一塁を回ると、三塁コーチャーが腕をまわしている。
訳も分からないまま2塁につくと、まだまわしている。
そして三塁につくと
「永松!!行けっ!!回れ!!」
結局ホームまで帰還。ランニングホームランになった。

こうして、浩一郎は鮮烈なデビューを果たした。