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オバマ氏とトランプ氏の「共通点」が、中国の暴走を招いた!

 

© diamond オバマ氏とトランプ氏の「共通点」が、中国の暴走を招いた!

 

内向化が止まらないアメリカ、南シナ海などで膨張し続ける中国、イギリスのEU離脱、IS(イスラム国)による相次ぐテロ……この動揺する世界を、日本はいかに乗り切るべきか?人気ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の最新刊『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』の中から紹介していこう。

「南シナ海は古代から我々のもの」という中国の主張に「違反」判定が下った

いま、私たちの眼前で起きているのは、国際社会の法を守る陣営と守らない陣営の対立である。

2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、中国が南シナ海に独自に設定した境界線「九段線」には法的根拠がないとする裁定を下した。これは中国の主張や行動は国連海洋法条約に違反するとして、3年前にフィリピン政府が訴えた仲裁手続きに関する判断である。

裁定は確定的であり、上訴は許されない。すなわち、最終決定である。

「南シナ海は2000年も前の古代から中国の海」だとしてきた主張は退けられたのであり、中国の完敗である。

常設仲裁裁判所の裁定文は500ページを超える大部のものだが、そこには、前述の南シナ海のほとんどすべてが中国の海だと主張する根拠、すなわち九段線は認めないという点に加えて、以下のような他の重要な論点も含まれている。

・中国がスプラトリー諸島のミスチーフ礁で造成した人工島は、フィリピンの排他的経済水域の200カイリ内にあり、フィリピンの主権を侵害している

・スプラトリー諸島には国際海洋法で認められる島はない、したがってそこに人工島を造成したとしても、人工島を基点にして排他的経済水域、領海などは形成されない

・中国はフィリピン漁民の活動を著しく妨害した

・中国は生態系に取り返しのつかない害を与えた

などである。

国際社会のルールを受け入れるつもりがない中国

ただ、中国側は仲裁裁判自体を認めない、したがって裁定そのものも受け入れないと早くから宣言し、アメリカが空母10隻を南シナ海に展開しても中国は恐れないなどと強硬姿勢を取ってきた。

事実、仲裁裁判所が裁定を公表する予定を明らかにすると、中国は南シナ海に主力艦隊を集結させて、これまでで最大級の軍事演習を1週間にわたって実施してみせた。

南シナ海を管轄する南海艦隊のみならず、北海艦隊、東海艦隊も参加しての大規模軍事演習の映像を公表したのは、フィリピン政府のみならず国際社会に、どのような国際法に基づく判決であろうとも中国は受け入れないという固い国家意思を明らかにしたものだ。中国は法の支配を離れて力の支配を選択したのである。

国際法を尊ぶ国々にとっての課題は、裁定をどのように具現化するかである。裁定が出された当日も、習近平主席は北京で開かれた欧州連合(EU)との会議においてトゥスク大統領に対し、「中国の南シナ海における領土主権と海洋権益は、いかなる状況下でも裁定の影響を受けない。裁定に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と語った。

言葉による拒否だけでなく、行動においても中国は強い拒否の姿勢を示した。南海艦隊が海南省三亜市の海軍基地に最新鋭のミサイル駆逐艦「銀川」を配備、命名式を行い、スプラトリー諸島のミスチーフ礁とスービ礁に建設済みの飛行場では、彼らは民間機の試験飛行を実施した。

南シナ海で中国がやっていること

南シナ海の現状を改めて整理しておこう。北方のパラセル諸島は、40年以上前に、中国がベトナムを攻撃して奪い、現在は、中国海軍の拠点となっている。

東南に下ると、スカボロー礁がある。台湾に近く、フィリピンにおける米軍の拠点であるクラーク、スービック両基地からも遠くないスカボロー礁は、3年前から中国が実効支配を続けている。

同海域では、埋め立てにつながると見られる船の集結が確認されており、オバマ政権の間に、中国は埋め立て工事と軍事拠点の構築を断行しかねない

さらに南に下ったスプラトリー諸島では、フィリピンが領有を主張する岩礁が7つも奪われ、埋め立て工事が完了した。その面積は、13平方キロにも及ぶ。

人工島には、3000メートル級の滑走路が建設済みだ。北部海域のパラセル諸島には戦闘機、爆撃機、地対空ミサイル、地対艦ミサイルなどの配備が確認されており、スプラトリー諸島にも同様の武器、装備が配備されると考えなければならない。

今回、仲裁裁判所の裁定が下されたとはいえ、これらの島や施設を元の岩礁に戻して、南シナ海の原状復帰を図ることはできるのか。アメリカ国防総省がイージス艦「ラッセン」や空母「ロナルド・レーガン」を南シナ海に展開させても不可能であろう。中国は、拠点を築いてしまったのである

すべての発端はアメリカの「自国第一主義」

なぜ中国はここまで大胆に行動を起こし得たのか。原因は、オバマ大統領にある。2013(平成25)年1月から始まった第2期オバマ政権は、対外政策に関する限り、後退に次ぐ後退を重ねた。オバマ政権2期目こそ、後世に、アメリカの後退の始まりとして記憶されるであろう。それはパックス・アメリカーナ(アメリカによる平和維持)の時代の終焉につながる危機でもある。

アメリカの後退を象徴する驚きの言葉が世界を駆け巡ったのは、2013年9月10日のことだった。オバマ大統領が、アメリカは中東のシリアに軍事介入しない、その理由はアメリカが「世界の警察」ではないからだと語ったのだ。

間髪を入れずにロシアのプーチン大統領がアメリカの不介入、その存在の空白を埋めるかのように動いた。当時、シリアのアサド大統領は、化学兵器を使用して、10万人を超える自国民を殺害していた。

アメリカはアサド政権を打倒すべきだったが、オバマ大統領の不介入政策でアサド政権の跋扈を許し、前述の演説をしたのだ。動こうとしないアメリカを尻目にロシアは次々と先手を打った。化学兵器の国際管理を提案し、自国民を殺害し続けてきたアサド大統領と共に、プーチン大統領が正義の味方であるかのような位置を得たのである。

アメリカを主軸とした冷戦後の国際秩序に異変が生じた瞬間である。

アサド大統領を支援するプーチン大統領は、テロリスト撲滅と称して、反アサド勢力を攻撃し始めた。それが中東の混乱を深め、大量の難民を生み、ヨーロッパを追い詰め、イギリスのEU離脱の原因となった。

ひたすら軍事力の行使を忌避するオバマ大統領の不決断が国際政治の力学に空白を生み、中国とロシアの膨張を可能にした。イスラム国(IS)をはじめとするテロリスト勢力の膨張も同様である。

一見過激なトランプ氏の主張も、オバマ氏の主張の延長線上にある

オバマ政権が続くあと5ヵ月間、アメリカは事実上、機能しないだろう。

アメリカは、いま、大統領選挙の真っ只中にあり、共和党のドナルド・トランプ氏の主張する「アメリカ第一」主義が広がっている。移民・難民の排斥、同盟諸国による防衛予算の負担増を1つの特徴とする氏の主張は乱暴に聞こえるが、実はオバマ大統領の主張と重なるのである。

オバマ氏の中東への軍事介入の拒否も「アメリカ第一」主義の一例だ。また、氏が大統領に就任した2009(平成21)年には、陸軍大学ウエストポイントで、自分の最も強い関心は国家建設にある、すなわちアメリカをしっかりと建てるということだ、と語っている。

他国のことよりアメリカだというオバマ大統領の主張は、トランプ氏の「アメリカ第一」主義と基本的に変わらない

他国の争いに軍事介入することはもうしたくないと、多くのアメリカ国民が共和党、民主党の相違を超えて考え始めている。アメリカを主軸とする冷戦後の世界の体制は、ここにきて明白な変化を遂げ、孤立主義にシフトしつつあるのである。(櫻井よしこ ダイヤモンド・オンライン 2016.7.28 11:00)

 

 

衰退するアメリカの予感である!!