深下腹壁穿通枝皮弁法

癌研有明病院に於いて同院で手術・治療をした患者さん向けに行っている腹直筋を犠牲にしない術式です。
現時点で。月に4件の施術が可能になっているとの事ですので、今後益々事例が蓄積されていくことでしょう。
同院では当然インプラントによる施術も行っています。
患者さんが充分に納得できる術式を選択でき、安心して再建を行える環境が整っています。
※同院ではいわゆる「同時再建」は行っていません。
同時再建ではありませんが、
一期再建」で、ティッシュエキスパンダーを挿入する施術を乳房切除術と同時に行っています。

-------------------「癌研HPより引用」-------------------------------
乳がんの根治手術と同時に組織拡張器(ティシュ・エクスパンダー)を挿入し、切除後の組織(皮膚)を徐々に延ばしておき、手術をしていない側と同じ大きさになったところで、人工乳房(シリコン・インプラント法)もしくは自分のおなかの組織(皮弁法)で乳房を再建する方法です。皮下乳腺全摘術を受けられる方が適応となります。
私たちは、乳房再建を希望されている患者さんには一期再建を推奨しておりますが、これにはいくつかの大きな理由があります。
(中略)
私たちは、乳がんの根治手術の最終病理診断をきちんと得たうえで再建手術を行うことが癌治療を行ううえでより望ましいプロセスであり、このことは、ご自身が気持ちを切り替えて新たなステップへふみだすためのたいせつな過程と考えております。
一期再建のデメリットとしては、乳がんをきちんと切除したうえでティッシュ・エクスパンダーを挿入するため、ごくまれに乳がん切除のためにうすくなった皮膚の一部の血流が悪くなることがあり、縫い合わせた皮膚の創縁(そうえん:ひふのふち)がじくじくする(潰瘍になる)ことがありますが、さまざまな治療方法がありますので心配ありません。
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深下腹壁穿通枝皮弁法
1990年代前半から、乳房再建の先進国であるヨーロッパやアメリカの一部を中心に、腹直筋を犠牲にせずに腹部の皮膚、脂肪組織と下腹壁動静脈を移植する穿通枝皮弁法という方法が行われるようになってきました。
この方法は、筋肉の機能を残したまま組織を移植することができるため、最も理想的な方法といえるわけですが、筋肉から血管をはずす作業は高度な技術が必要で、手術時間も通常の腹直筋皮弁法に比べると長くならざるをえないのが難点といえます。
しかし、手術時間で数時間の差があっても、体や組織は一生使い続ける大切なものであり、私たちは、患者さんの身体的な損失を最小限におさえ、可能な限り腹直筋を温存することを目標として、自家組織での乳房再建の場合には、当院形成外科では深下腹壁穿通枝皮弁法を第一選択に考えております。

★深下腹壁穿通枝皮弁の利点と欠点について
ここで深下腹壁穿通枝皮弁の利点と欠点について整理してみます。
(欠点)
まず、欠点についてですが、筋肉や神経を丁寧に分けて温存する作業が必要なため、技術的な難易度が高く手術時間もインプラントに比べるとずっと長くなります。
また、回復までに時間がかかり、術後約2日間はベッド上安静が必要で、入院期間も約10日前後となり、少し長くなります。また、インプラント比べれば、おなかの傷が増えることも否めない事実です。
(利点)
その一方で、利点について挙げますと、従来の腹直筋皮弁法に比べて筋肉や筋肉を動かす神経をできるだけ残すため、身体に対する侵襲を最小限にできるというメリットがあります。言いかえれば、自家組織による再建手術の中では最も身体にやさしい手術であると言えます。
また、自分の組織であるため、仕上がりの外観やさわった感触がインプラントに比べて非常に自然であることも特徴の一つです。
さらにインプラントでは表現できない大きめの乳房や下垂した形を表現することも可能です。
皮弁の採取部のきずは短所で申し上げたとおり、下腹部に残るのは確かですが、おへそから約10センチ下方であり、下着にうまくかくれる位置なので日常生活のうえでは通常は目立ちません。
治療費については、自家組織による手術であるため保険診療の適応であり、インプラントに比べると、経済的な負担が少ないこともメリットのひとつです。

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引用/癌研有明病院:形成外科HP「乳房再建をお考えの方へ」
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