アメリカに去勢された男たちが母性の胎内の中でのみ、擬似的な権力を振るう。
お寒い戦後日本社会の構図。
こんなような状況を著者は「母性のディストピア」と呼んでそのありようを戦後のアニメから読み解いた。
なぜアニメなのか?
別に著者は現実社会に興味がないわけではない。
だが、今の日本の現実社会、とくに政治界隈に論ずるに足るような事柄は何もない、と言い切る。
今の日本では、現実の政治家を語っても真実にたどり着かない、アニメやテレビなどの虚構の文化にこそ、歴史的真実的な日本の現状が反映されるのだ。
そして、「今の自分たちには本当のことは何もないのだ」ということを自覚して、そろそろ、本気で現実社会に向き合っていこうではないか、という実は結構熱いメッセージが込められた本であった。