サクラやバラが有名な都電荒川線だが、よくよく目を凝らして歩いてみれば、実は多くの花が咲いていることに気づかされる。特に、春からこの新緑の季節にかけては、沿線で静かに咲いているのがツツジだ。


 この季節、東京の街道沿いにはツツジがそこかしこに咲く。

 本来、手入れが面倒な花を植えることは、自治体側としても嫌がる。

 近年、イチョウやらヤナギの街路樹が排除されている背景には手間暇がかかることとメンテナンスの費用が大きいことがあるという。


 だが、都電沿いだけではなく、明治通りにも淡いピンク色のツツジはよく咲いている。

 手間がかからない、お金もかからないという理由もあるかもしれないが、なによりも排気ガスが蔓延する東京という知でも、たくましくて挫けない強い花、それがツツジなのかもしれない。



都電ひとつばなし-つつじ


 鉄道と花のコラボレーションは、定番のサクラを除けば、菜の花が有名な地があるぐらいで、実はほかにはあまり挙げられない。

 ただ季節をきちんと選んで乗車すれば、中央本線の桃、京成本線や北陸本線のチューリップなどが車窓から堪能できる。


 華やかに彩る花はただ寝て移動するだけの空間と化してしまった鉄道を変える力を持っているはずだ。

 ただ、サクラやバラや菜の花やチューリップだけではなく、ヒマワリやタンポポやポピー、マーガレットといったバリエーションが増えると、また同じ路線でも気分が違っていて楽しいのだが…。


  花を植えて、名所にすることは何十年もかかる壮大な構想である。

 都電のバラだって、20年以上を経た今でこそ有名になったわけだが、その裏には果てしない苦労があったはずだ。


 ただ乗るだけではなく、一度乗ってもらうだけではなく、何度も乗ってもらえる。

 案外、そんなところに鉄道再生の目指すヒントがそんなところにあるのかもしれない。