日経新聞の土曜朝刊別刷り一面に「日経プラスワン」というコーナーがある。
このコーナーでは、毎回、有識者何人かがテーマ別に、○○ベスト10を決める。
例えば、オーシャンビューが楽しめるホテルベスト10といった感じだ。
その日経プラスワンから、「車窓から紅葉がキレイに見える列車」を選出したいので、識者の一人として協力してくれないか? という依頼をいただく。
依頼を受けて考えてみると、車窓風景が楽しめる路面電車って、案外少ないなと改めて思ったりした。
例えば、都電の場合、沿線に桜の名所はあるし、バラも咲き乱れる。
にも関わらず、車窓風景としては・・・である。
どちらかというと、下車してじっくりと楽しむといった趣が強く、車窓で楽しむような感じではない。
そこには、路面電車が都心を走っている乗り物だからという、車窓風景としてはハンディキャップを負っている部分も少なくない。
それでも、江ノ電や広島電鉄、鹿児島市電などは盛んに沿線風景にも力を入れ、車窓を楽しいものへと変えようとしている。
とはいえ、人知を超えた自然の力には、到底及ばない。
私が一位に推したのは箱根登山鉄道で、箱根登山鉄道はアジサイの時期には多くの人出でごったがえすが、紅葉のシーズンも新緑のシーズンも、やはり車窓は美しい。
特にスイッチバックの信号場から眺める早川橋梁を走る登山電車は、ココが日本であるのか? と錯覚してしまいそうになるほどだ。
この信号場で停車している時間は短い。
まして、信号場で下車させてもらえるのは、取材という名目のある者だけが持つ特権でもあるが、特権を持つ者だからこそ他者にその素晴らしさを少しでも伝導しなければならないという使命を負う。
そして、都電を筆頭とする街中を走る路面電車にも、こうした箱根登山鉄道のような車窓風景は無理でも、少しでも乗車したくなるような彩られた車窓風景が期待できるといいのだが…。
バラが咲き誇る都電沿線。
夢の空間づくりは、まだまだ先が長い。
日経新聞PLUS1紙上でのBEST10は紙面を見ていただくとして、小川が挙げたBEST10は
1 箱根登山鉄道登山線
2 叡山電鉄鞍馬線
3 神戸電鉄有馬線
4 山陰本線
5 吾妻線
6 南海本線高野線
7 青梅線
8 明知鉄道明知線
9 陸羽西線
10 山陽本線
と、ランキングをひっかきまわしただけでした(笑)
ちなみに、ほかの識者(五十音順、敬称略)
今尾恵介(新潮社「日本鉄道旅行地図帳」監修者)
川島令三(鉄道評論家)
桜井寛(フォトジャーナリスト)
杉崎行恭(フォトライター)
種村直樹(レイルウェイ・ライター)
中井精也(鉄道写真家)
野田隆(オールアバウト「鉄道旅行ガイド」)
原武史(明治学院大学教授)
真島満秀(写真家)
南正時(鉄道写真家)
村上旭(日本観光協会)
矢野直美(フォトライター)
明らかに、自分一人が浮いているんですが…。