首都・東京23区において、もっとものんびりと時間が流れる沿線風景はどこか?
 という設問があるとすれば、間違いなく都電荒川線だろう。


 いや、東急世田谷線ではないか? という反論があるかもしれないが、東急世田谷線は環八を横断するそのさまが威風堂々としていて好きだが、その姿はのんびりとしているとは言い難い。


 とはいえ、都電荒川線もまた、明治通りや本郷通りを横切るため、あまりのんびりしているといった印象は薄らいでいる。


 それでも、高速化に向かう鉄道網とは無縁で、いまだにスローを頑なに守っているのも都電荒川線でもある。


 のんびりした街には、威勢のいい掛け声が飛び交う商店街が似合う。

 都電の沿線には、まだわずかながらそうした小さな店が軒を連ねる商店街が点在している。

 大型ショッピングモールの台頭、再開発の波からは逃れようもなく、少しずつ昔ながらの面影は消えていってはいるものの、まだ何とか残る商店街。


 ぶらりと散歩にやってきて、ただ都電に乗る。荒川線を味わう。


 そんなグルメでも観光でもない旅。

 車窓を眺めながら、この街をぶらぶらしてみたいな、と思ったときにすぐ下車できる。
 ちょっと遠出の散歩には、都電のような交通機関が適しているのかもしれない。


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