町屋駅前からはじまったボクと都電の蜜月。
10年近くもの歳月を都電の沿線で過ごしてきた生活は、今日幕を降ろした。
朝、目を覚まして、気が向いたときにふらっと都電を見に行くことができる距離に、都電の車庫があった。
気分が沈んだときは荒川車庫と荒川遊園地前の電停間にある踏切まで歩いていき、そこでぼんやりと行き交う都電のテールランプやヘッドランプを眺める。それだけでボクには十分だった。
夜中に、乗客が誰もいない電停の光がぼんやりと闇に浮かぶ光景も、また好きだった。
あの情景は、どこか寂しげでもあったけれど、「寂しいのはキミだけじゃない。みんな心のどこかで寂しさを抱えているんだよ」と言われているような気がした
周囲は民家ばかりで光り輝くネオンがまったくないから、逆にこうした情景が心に沁みる。
10年以上もだらだらと住んだ都電沿い街。
ボクにとって都電はライターの出発点でもあった。
いつも見慣れていた都電を見れなくなるというだけでセンチメンタルになったりする。後ろ髪を引かれる思いを、ぐっと心に押しとどめながら。
今までのようには会えなくなるけれど、またここへ会いに来るさ。
それまで、いったんさようなら。
絶対、また会いに来ます。