月刊誌の取材で、再び木村裕子 さんのご自宅を訪問。


 前回の『EX MAX!』の取材が7月7日。それから約1ケ月半のタイムラグがあったのだけど、その間に彼女は着実にスターダムを駆け上がっている。

 

 前回とは違い、一躍、鉄ドルとして注目を浴びているだけあって、今回の取材は打ち合わせと打ち合わせの合間を縫うようにして取材・撮影をするという、綱渡りのような取材だった……。


木村裕子 (原作:小川裕夫 作画:宮田やすひろ@『増刊 特冊新鮮組DX』10月1日号より)


 ところで彼女が着ている赤い制服は彼女が手作りした、いわば「コスプレ」なのだが、実はこの制服を見ると、路面電車の取材で会った女性たちを思い出す。


 その中でも、木村さんから想起するのは函館市電と熊本市電だ。


函館市電


 函館市電は夏季だけ、箱館ハイカラ號が運行している。レトロなその車両には、通常の車両には乗務していない車掌がいる。


 戦中、函館市電は出征に借り出された男子の運転士や車掌の役割を女子に代役させていた。

 そうした流れが、箱館ハイカラ號の復活につながっていく。

 函館市電の車掌は女性が務めることになっている。それは熊本市電でも同じだ。



 熊本市電はLRV化した最新車両にLパーサーと呼ばれる女性車掌が乗務している。


 Lパーサーの仕事は、車内アナウンスやドアの開閉、切符の販売が主だが、熊本市電には欠かせない。



 鉄道業界は、ほかの交通機関、飛行機やバスと比べて女性の進出が著しく鈍い。

 飛行機には古くからキャビンアテンダントが任務に就いているし、バスでもバスガイドさんはほぼ女性が独占している。


 そうした女性が力を発揮するような役割の職種が、鉄道にはなかった。いや、かつては新幹線などに乗務するつばめガール、小田急ロマンスカーに乗務するエンゼルガールはいた。


 ところが、鉄道技術が進化し速度が向上することで、乗務時間は短縮。そうしたことが鉄道から食堂車などの設備を廃止するきっかけになり、女性が優位を発揮する職種は鉄道業界から消えた。そうした背景が鉄道業界への女性進出を鈍らせた。


 JR東日本では、社員の2割を女性にするプログラムが進行中だというが、つまり、いまだに社員の8割以上が男子であるという裏返しでもある。


熊本市電

  

 その一方で、路面電車は女性の進出は、わりと早かった。飛行機やバスに比べればまだまだ物足りない数字ではあるだろうが、少しずつ女性が活躍しつつある。


 とはいっても、路面電車は駅員や車掌をほとんど必要としないから、あまり女性を優先的に配置する職種は少なく、比率はさほど高いわけではない。


 それでも、駅員に女性を積極的に採用する江ノ電のような鉄道会社もある。



 働く現場からして女性が少ないのだから、鉄道マニアに女子が少ないことは当然と言える。


 職場ならまだ会社が配慮してくれる面もあるだろうが、男ばかりの鉄道マニアの集団に進んで入ろうとする女子は少ないだろうし、かなりの勇気がいる。

 そうした状況下に、木村裕子さんが登場したことは、鉄道界の大きなターニングポイントだとも言える。

 木村さんは9月1日~5日までの5日間に東海道本線の全駅を下車するという、鉄ならではの思考と行動をし示す、数少ない女性の鉄道オタク。


 彼女を先頭に、趣味・職場を問わず、続々と女性が鉄道業界に進出してくる。そんな変革が、静かに進行しているのかもしれない。



木村裕子3



 今回の取材日は奇遇にも木村さんの誕生日だった。

 あれこれ考えてバースデープレゼントを持参したが、正直、気に入ってもらえたかどうかは自信がない。


 木村さんを再取材した記事が掲載される『サイゾー』(インフォバーン)は、9月18日発売!