以前、洋紙発祥の地が王子だったことに触れて、王子製紙がここで興り、最近は製紙業の街になりつつある現状をこのブログでも書いた。しかし、澁澤榮一氏の功績は、製紙業を興したとか銀行業を日本で立ち上げたというだけにとどまらない。  実は、王子周辺は製紙業の街であったと同時に、教科書の街でもあった。  小中高と学校に通っていて、一度ぐらいは東京書籍の教科書を手にとった人は、かなりの数にのぼるだろう。その東京書籍が興ったのは、王子周辺である。このあたりには、まだ東京書籍の流通センターなどが残るが、図書館機能を持つ東書文庫という施設が、王子からほど近い場所にある。  今日の一葉は、その東書文庫。  そもそも、製紙業の発達が、紙幣と教科書だったことを考えれば、決して製紙業と教科書が切っても切れない関係であることは容易に考えがつく。日本の実業界を牽引し、その後は経済界だけにとどまらず、教育界や文化にも力を入れていた澁澤榮一。  娯楽の地として栄えた王子は、反対側に回れば教育の発信地でもあったのだ。 東書文庫