都電の取材に傾倒する少し前、私は定職に就くどころか仕事もせずに本駒込にある友人宅に3ヶ月ほど居候して無為な時間をだらだらと過ごしていた。時間はあり余るほど余っていた。  居候宅のすぐ近所に、本駒込図書館があった。ヒマを持て余した私は、時折、この図書館に足を運んでは、とにかく時間を潰した。  この本駒込図書館は、昭和46年に廃止された20系統の神明町車庫の跡地に建てられた。図書館に隣接して公園があるのだが、この公園内には、都電の旧車両が保存されている。  しかし実はまだこのときの私は、都電にまったく興味を持っていなかった。  都電沿線の店を取材するように命じられ、都電沿線を毎日歩くなるようになるのは、この本駒込図書館に行かなくなってから約2ヶ月後のことだった。   神明前公園