「夜になってホテルの外に出ると、暗いところでひとり、素振りをしているチームメイトを見かけた。これで二度目だ。前のときはその翌日、その子は決勝打を放った」
これは最近見かけた、ある外国人選手のつぶやき。
今年は日米対抗があるが、またたくさん観客が集まるのだろうか。オリンピックでメダルにからむたびに脚光を浴びる日本のソフトだが、リーグのほうは企業動員以外、観客はちらほら。でも、国際大会となると客は入るようだ。テレビ局がスポンサーになって宣伝してたから?
実業団が存続する限り、選手はソフトを続けられるし、熱心なファンは球場に足を運ぶ。今までと同じで良かったのだが、何を狙っての新リーグなのだろう。試合数が増えたことは、とりあえずうれしいが。
単純に国際大会が楽しい、というのなら、なおのこと、日本リーグに注目して欲しい。日本のライバルとなる外国の選手たちの中には日本の実業団に所属する者も多く、普段は仲良しのチームメイト。ソフトボールの魅力が単に勝ち負けではなく、選手が苦楽をともにし、ひとつのプレイに一喜一憂する姿にあるのなら、国境を越えた友情、尊敬、競争は必ずあらゆる人の興味を引くだろう。そして日本リーグのファンになるだろう。
今でこそアメリカの最大のライバルになった日本だが、これは今も現役のウエノやアボットが現れてからの話し。割と最近のことだ。そして日本を強くしたのが日本リーグでプレイするアメリカ人。
事の発端は織機の関係者がアメリカの大学のピッチャーを招いたことにある。ルーシーカサレスだ。80年代のことなのでおそらくアメリカにはリーグがなかったのだろう。社会人になってもソフトができる環境を気に入ったカサレスは引退後もコーチとして日本に残る。
そしてカサレスがいるならと、安心して来日したのがミッシェルスミス。そしてスミスとバッテリーを組み、カサレス同様にコーチ、監督として日本に残るデビーシュナイダー。「毎日ソフトができるから」それが理由だった。
スミスは日本リーグを無双した。日本のバッターはかすりもしない。外野に飛ばないから、外野手は内野手のすぐ後ろを守る。防御率は年間0.00。つまり自責ゼロ。織機は優勝争いの常連になる。
スミスを打たないと優勝できない。日本の選手は必死に研究し、練習した。スミスはまた本格的なライズを初めて日本に持ち込んだ。スミスの投球フォームも参考にされた。日本人投手でも100キロ台の速球を投げる者が現れ始めた。
そして2008年。北京。ウエノという最強右腕とスミスによって鍛えられたバッター陣はついにアメリカを破って悲願の金メダルを手にする。
北京後、オリンピックからソフトが除外されたこともあってか、日本でソフトを続ける外国人選手が増える。そのひとりがオスターマンと並ぶ史上最高左腕モニカアボット。優勝争いはウエノの高崎かアボットのトヨタ。代表クラスのピッチャーがいないと上位に食い込めない。ホンダ、デンソー、戸田、日立なども外国人選手を招くようになると、日本リーグのピッチャーは軒並み代表クラスとなる。
普通に投げれば完封が当たり前。ノーヒットを免れるのがやっと。そんな代表クラスのピッチャーを打たないとレギュラーになれない。日本の打者のレベルが上がった。代表クラスにならないと試合に出られない。投手のレベルも上がった。
そして2020東京。2-0で日本の勝利。アメリカの打線が大会をとおして低調だったのは、リーグがない、試合に出てないのも一因ではないかと勝手に分析している。
アメリカはソフト大国ではあるが、中心は大学リーグ。アメリカの子供たちはただスポーツをするのではなく、返済の必要がない奨学金を目指してローティーンの頃から練習に励む。リーグ戦にはテレビ中継があり、莫大な放送料が大学に舞い込む。ヘッドコーチは高給取り。全国のクラブチームに目を光らせ、有望な選手を見つけては青田買いする。
ところがプロリーグがない。あったけど、夏だけしか給料が出ない。選手は他にアルバイトしなければ選手活動を維持できなかった。そこでうまいこと春と秋に分割されている日本リーグがアメリカ人選手の間で人気になった。
うっかり敵に塩を送ってしまい、金メダルを二度もとられてしまったアメリカではあるが、それなりの事情があった。本当のプロになれる、すなわち、ソフトだけしてればいい生活は日本にしかなかった。母国はそれを与えなかった。
もちろん、模範となる選手が近くにいるだけでは上手くならない。アメリカと対等に渡り合えるようになった裏側には日本人選手の涙ぐましい努力があった。外国人選手は日本の長い練習時間に初めは辟易するが、競技に真摯に打ち込む姿を目の当たりにし、ソフトに対する感謝の気持ちを新たにする。チームメイトの努力を知っているから、自分も貢献したいと思う。
日本人選手も外国人選手もチームやソフトに対する熱い想いは同じ。心をひとつに頂点を目指す。それが日本リーグ。
以上、動画や記事をあされるだけあさって知りえたことをまとめてみた。所詮、部外者で素人の雑感にすぎないが、新しいリーグを見て楽しむための基礎知識としては、個人的にだが、役に立っているような気がする。外国人選手は結構、動画でいろいろ話してるけど、日本人選手となると皆無だ。日本人選手の視点から日本リーグのことをもっと知れたら、また違った感想になるかもしれない。
最近のリーグ戦を見て、外国人投手に頼りすぎな気もするが、そんな彼女たちも知っている。日本の選手がどんなに努力しているか。金メダルにもどんな勝利にも値することを。
「夜になってホテルの外に出ると、暗いところでひとり、素振りをしているチームメイトを見かけた。これで二度目だ。前のときはその翌日、その子は決勝打を放った」
この選手はまたもや、翌日の最初の打席でホームランを打ったそうだ。