先入観
昨日中継を担当した川崎vs仙台戦。
中村憲剛の前線の選手としての守備について何度か
言及をしました。
ピッチコンディションの悪さと仙台の守備の粘りもありなかなか思うようにゴール近くまで運ぶ事が出来なかった川崎でしたが、憲剛の守備をきっかけに相手のミスが生まれ。
最終的には彼自身がゴールを決めて川崎が1ー0で勝利を収めました。
この試合だけではなく常にトップ下の位置から前に出てプレスの方向決め、スイッチを入れる仕事を小林などと一緒に憲剛は行っていますが攻撃の部分が素晴らしいという事もあり彼の守備について言及される事はなかなかありません。
昨晩の中継では意識したということではなく、普通に見ていて上手くて効果的な守備を見せていたので当たり前に言及させてもらいました。
得点場面を改めて見てもらうとキーパーに下げさせるポジション取りから、下げた瞬間にスピードを上げてアプローチ。
憲剛に勢いよく寄せられたシュミット・ダニエルは
選択肢が持てずに右前方へ蹴るしかなく、そのボールを登里がしっかり縦のスライドからのヘッドで跳ね返し。
大岩のコントロールミスにより憲剛のところにボールは「戻って」きました。
ボールが戻ってきてからのターンからのシュートももちろん評価すべきポイントですが、僕にはどう考えても彼の守備が生み出したゴールにしか見えませんでした。
そして中継の中で「得点場面を振り返るのであれば憲剛の守備のところから見せて欲しい」と中継スタッフにお願いをしましたが、残念ながら彼の巧みな守備は映像として紹介される事はなくシュミット・ダニエルがロングキックした直前からの映像しか出てきませんでした。
攻撃の選手だから、得点場面だからシュートだけを見せるのではなくそこに至る過程もしっかりと見せて伝えていく事がサッカーに対する理解を深めてくれます。
「中村憲剛」
確かにJリーグの歴史に残る素晴らしい攻撃的MF、稀代のパサーだと思います。
だからといって彼が攻撃だけしているのかといえば、そんなことはない。
立ち方、寄せるタイミング、角度、スピードの変化。
守備でも毎試合よく考えられた巧みな守備を見せてくれています。
僕は昨晩の試合を伝える解説者として、伝えるべき事を言語化しようと努力をしました。
そして言語化するには映像があるとより説得力と納得感が残ります。
昨晩の試合の中で憲剛が見せた守備は言語化すべきもので、試合を動かし決定付けるきっかけとなった素晴らしい守備でした。
映像を作り視聴者に見せる側の人達も、攻撃の選手だからという先入観は持たずに良いプレーを見せてくれた選手はきちんと紹介しなくてはなりません。
中継の中でお願いをする形で言葉にしたものの最後まで映像が出てくる事はなく、残念な気持ちでスタジアムを後にしました。
攻撃の選手は攻撃についてだけ触れれば良いわけではありませんし「攻撃は後ろから守備は前から」という言葉があるようにサッカーは常にチーム全体として動かなくてはならないスポーツ。
攻撃の選手の守備があって中盤以降の選手は奪いどころを見つける事が出来ます。
キーパーを含めた最終ラインの選手達のビルドアッププレーがあって中盤より前の選手達はより効果的な形で攻撃を行うことが出来ます。
サッカーを正しく見せることが我々メディアに課せられた役割だとして、昨晩の憲剛の守備こそしっかりとフォーカスし伝えていくべきものだったと今でも感じています。
何故ならそれがサッカーであり、中村憲剛だからです。
攻撃での仕事、パスやシュートだけで彼を評価するのは彼が毎試合多くの汗を流して走っている事実をなかった事にしてしまいます。
それはサッカーを正しく伝える事にはなりません。
地上波でもCSでもどこでもサッカーはサッカー、同じなんです。
表現の仕方や掘り下げ方は変えたとしても、選手が見せてくれた素晴らしいプレーは絶対に漏らさず伝えていかなくてはならない。
そう改めて感じた昨晩の中継でした。