帰国しました。
12月11日の朝、シンガポールでの生活を終え日本に帰国しました。
現役最後の試合を終えてからひと月、シーズン中はなかなか出来なかった事を積極的にしてきました。
例えば息子のアーセナルシンガポールの練習の送迎及び観察。
シンガポールは教育一本と呼んでいいんじゃないかというくらいの学歴社会、小学生の頃から家庭教師当たり前、聞いたところによれば小学生の時の成績で既に振り分けられてしまい、将来なれる職業が決まってしまうという。
子供がサッカー選手になりたいと言うと親が全力で止めるという話があるくらい勉強勉強勉強の国シンガポール、そしてスポーツ、サッカーの位置付けがとても低い国シンガポール。
外で遊ぶ子供を見る事は基本なく、シンガポールは10時から3時までは紫外線が強く暑いからという理由で学校にて外で運動する事が認められていないそうで。
そんな言うほど暑くないですけどね、日本の真夏の方が断然厳しいですから。
外で遊ぶ子供を見ない、遊ぶ場所も実はなく、スタジアムが常に夜9時まで開放されているのでトラックで走る人は結構いますが子供はほとんど見なかったですね。
だからサッカー一つするにもなかなか難しいところがあってきちんとやるとなるとアーセナルのようなクラブに入ってする以外に方法がなく。
車で片道40分くらいの道を毎週火・木・土。2週間に一度は日曜日に試合。
平日は18時から20時まで、シーズン中は僕も夕方練習だったのでいつも妻が娘二人を連れて、お弁当を作って送迎してくれていました。
シーズンが終わって時間が出来たので、自分が送迎をし練習も見てやる事で妻には少し楽をしてもらいつつ息子にはプレッシャーを与えてやろうと思いついて行きました。
2週間に一度、日曜日にアーセナルリーグというものがあって、シンガポールの子供達のリーグ戦が行われていました。
プレミアリーグ、チャンピオンシップと本場イングランドプレミアリーグと同じレギュレーションを取り昇格・降格もあります。
前期の最終戦が8日だったということもあり帰国を延ばしたわけなんですが、欧米の子供達はやはり身体が大きくまた躊躇せずにぶつかれるので加入当初は全く太刀打ち出来ずに悪戦苦闘していました。
でも子供は慣れるもので、回数を重ねるごとに適応していったしその中で彼等とは違うテクニックやパスといったものを出せるようになりました。
英語が話せない我が子ですが、何故か周りと打ち解ける術を持っていて(笑)
言葉だけではない心の繋がりだったりコミュニケーション能力だったり、そういった事を伸ばすことが出来たというだけでもアーセナルでやれた甲斐はありました。
ひと月、じっくり子供を観察し、アーセナルの練習も観察し、コーチ達とも話をさせてもらい、自分がやるサッカーから人に教え伝えるサッカーへのちょっとしたマイナーチェンジの期間にする事が出来たかなと思います。
アーセナルからは、夏くらいにパートタイムでいいからコーチしてみないか?と誘ってもらった事もありました。
残念ながら3月にした怪我と付き合いながらシーズンを闘っていた最中だったので、引き受ける事は出来ませんでした。
年齢的にも選手をしながらコーチをするのは難しく感じたので、本業に支障が出てしまっては本末転倒。
やりたかったと思う自分もいますが、見て勉強する時間にあてさせてもらいました。
息子のチーム、U10のコーチ、ローレンスがわざわざ帰国の際、空港まで見送りに来てくれました。
ローカルの方ですが子供達のサッカーに取り組む姿勢には厳しく、よく大きな声で注意している姿を見ましたが子供に対する愛情がとても深く必ず後でフォローをする事も忘れない、立派な人でした。
特に欧米の子は良くも悪くも自己主張がはっきりしているので(笑)
シンガポールでもサッカーと、それから人ときちんと向き合って立派に仕事をしているローレンスのような人に出会えたのはとても嬉しい出来事でした。
指導者としてどうあるべきか、もちろん子供が対象ではありますが、常に真剣に子供と向き合い良いものは良い、そうでないものは違うと情熱を持って接する姿はとても清々しくまた勉強になりました。
息子もよく大きな声で怒鳴られていましたがローレンスコーチの事が大好きで。
理由を尋ねたらいいプレイが出来たら凄く褒めてくれるし、そうでない時はちゃんと教えてくれるからと。
お前、英語分からないじゃんと突っ込みたくなりましたが(笑)
要はきちんと自分の事を見てくれているという事が嬉しいということなんでしょう。
それは子供でも大人でも同じですから。
そういった意味では僕にとってもスティーブ・ペリマンという人は同じような存在でしたね。
彼ほどどの選手ともフェアにまっすぐに向き合える指導者はいなかったです。
情熱に溢れた、素晴らしい人格者であり指導者でした。
選手のプレイを自分の事以上に喜びまたし、だらしのないプレイには烈火の如く怒りました。
常に見られている、見てくれているその感じが集中力とモチベーションに大きく関わっていたのは間違いないと思います。
戦術が、とか選手起用が、とかもちろん指導者には必要な要素なんでしょうが、頭でっかちにならずに目の前にいる選手達をどれだけ真正面から見れて、理解出来て、そしてやる気にさせる事が出来るかという事こそが指導者に最も必要なものなんじゃないかと思うのです。
そういう人であることが大切なんだと思います。
ローレンスを見てそう思い、スティーブを思い出しそう思いました。
もちろんトルシエもまた少し違ったタイプではありますが誰一人特別な扱いをせず常にチーム内にポジティブな競争意識を持たせる事が出来た稀有な人だと思います。
先日たまたま電話で話しましたがMr Todaと言われてMrなんて言うようになったのかと笑いました
現役を退くこのタイミングでまたトルシエと繋がったというこの偶然も大切にしてこれからの新しい道に進んで行こうと思います。
やる気は満々です。
その第一歩として12月14日深夜、WOWOWスペインリーグ、レアルマドリー対オサスナの試合にゲスト解説として呼んで頂きました。
サッカーを言葉で伝えるという今までとは違う仕事になります、上手くやれる自信はないですが僕はサッカーを愛し生きてきた人間ですから、それを普通に出して自分の言葉で何かしら伝える事が出来たらいいなと思います。
ドキドキするんだろうか。
楽しみです。
良かったらご覧になってください。
それでは。