こんにちは!東大CARPです!

 

非常事態宣言が遂に出されてしまいましたね…

授業は長期間に渡ってオンラインでの形式になりそうですが、東大CARPでは授業が本格的に始まるまでは週二のペースで話し合う場を持っているので、かなりZoomマスターになりつつあります。皆さんも外出できずに話せない身近の人とビデオ通話で話してみるのはどうでしょうか?

 

さて、今回のテーマは、、、

 

「生命倫理」!

 

前回の環境問題もそうですが、生命倫理は遺伝子組み換えやクローンなどの遺伝子技術、臓器提供などの医療技術、妊娠中絶や不妊治療というような生殖技術など扱う対象が広範囲に渡っている分野なんです。

 

ところで皆さんは2018年の11月に世間を震撼させた生命倫理に深く関係した事件を覚えていますか?

 

その事件とは、賀建奎という中国の研究者が「遺伝子を人為的に操作したヒトの受精卵から双子が生まれた」と突然発表した事件です。

 

この事件がなぜ問題になったかと言えば、生まれてくる子供が先天的な病気にかからないように「人為的に遺伝子を操作して」予防してしまった、という点にあります。つまり、今回使われた技術を用いて親の望み通りの子供を産む、ということが可能になりつつあるのです!

 

そこで今回はそこで使われた技術である、、、

 

「ゲノム編集」についてみんなで学んでいきました!!!

 

 

 ▲「ゲノム 」という単語を聞いて多くの人が思い浮かべるであろうDNA

 

「ゲノム編集」 という言葉を聞いた時皆さんはどんなイメージをしましたか?

 

マッドサイエンティストが、新種の動物を作るために密かに使っている何かヤバい技術なのか…  

 

と、そこまで考えた人はいないかもしれませんが、「なんとなく危なそう」という印象を持った方が多いかもしれません。

 

しかし、この技術遺伝子組み換え技術よりも安全な技術であるばかりか、ゲノム編集でできる作物は全て自然に生まれる可能性のある種類だけなんです!

 

それを簡潔に説明したいと思います。

 

さて、私たちの身近にあるキャベツとブロッコリーは実は同じ祖先を持っていることを知っていましたか?

 

実は今ある野菜は、人間が特定の遺伝子に「突然変異」を起こした種類を選び続けることで、やっとたどり着いた人間の努力の結実なんです!

 

だから、お目当ての作物は狙った遺伝子に突然変異を起こすことで作り出すことができるってわけです。

 

ところで、突然変異は遺伝子が誤って複製されて伝わることで起きますが、そんなことはもちろん頻繁に起こってしまったら生物として困るわけなので、滅多に起きることではありません。

 

そこで私たち人間は目当ての作物に早くたどり着くために、自然に突然変異したものを選ぶ段階から、紫外線を当てて人為的にランダムな遺伝子の突然変異を促す段階を経て、遂に今となってはゲノム編集によって、狙った遺伝子だけに(ごく稀に狙いを外すこともありますが)突然変異を促すことができるようになりました。

 

ここで「ごく稀に」という言葉に不安を感じた人はいませんか?

 

「たとえ自然界に起きる現象でもまだ起きてないパターンの突然変異が起きて、環境に害を及ぼすような種類が生まれるんじゃないか」

 

という疑問を持つのも当然だと思います。

 

しかし! その「ごく稀に」というのがどれくらいかと言うのを、特定の場所だけを変異させることができる原理とともに紹介したいと思います。

 

今一番ポピュラーな技術がCRISPR/Cas9というものですが、これは20個の塩基を持つ部分とDNAを切断する部分を持つ物質を使います。この20個の塩基によってくっつく場所を特定しますが、4種類ある塩基はそれぞれ対応する一つの塩基とのみ結合するので、1,2個配列が違っても勘違いしてくっついてしまっても、その確率は2019年の年末ジャンボの一等の当選確率の1/30以下です! (0.00000016% !!!)

 

つまり、今までの内容をまとめれば

 

「ゲノム編集は自然界で稀に起こる現象を人為的に起こす技術」

「自然でも稀に生まれる個体の誕生を可能にする」

 

夢のような技術なんです。

 

この技術を使った作物の流通は認可を受ければ可能なっていますし、ゲノム編集で作った特定の疾患を持った実験動物の販売はすでに国内でも行われています。

 

その一方で、ヒトの受精卵に用いることは「臨床研究の不足」「倫理上の問題」によってWHOも禁止するように求めています。また、日本でも最初の方に紹介した、中国人科学者の事件が発端となり、まだ具体的な法案にまではなっていないですが、禁止する方向で議論が進んでいます。

 

しかし、この臨床研究が進めば、この技術を抑制するものはもはや「倫理上の問題」だけであって、全世界とまではもちろん行かないとは思いますが、一部の国や地域では近い未来に実用化されてしまう可能性は十分にあります!

 

今回は生命倫理をテーマに学んでいきましたが、その全ては科学技術が進歩することに伴って今まで人間が意思決定に介入できなかった事柄に人間が介入できるようになってしまったことに原因があります。科学技術の進歩は意思決定の範囲の拡大をもたらし、技術を扱う側としての人間の責任がより重くなることを考えると、手放しに喜んでいいものではないんだなとつくづく思いますね。

 

ということで、今日はここまでにします。

次回は、生命倫理について学んだ上でのディスカッションの内容を上げたいと思います。

ありがとうございました!

 

以上、東大CARPでした!!