こんにちは!東大CARPです!

今回は、今年度初の開催となった定例研(定例研究会)を紹介していきたいと思います!!


少々時期はさかのぼりますが、4月と言えば入学式シーズンですね!

我らが東京大学でも、入試を突破した生徒たちが集って、日本屈指のイベント会場である武道館を貸し切っての開催となりました。

そこで毎年のように注目されるのが、新入生に送る祝辞です。

今年の祝辞を担当したのが、知っている人もいると思いますが、上野千鶴子名誉教授です。NPO法人のウィメンズ アクション ネットワークの理事長も担われている方ですね。


今回の定例研で焦点になったのが、この上野教授の祝辞をどう見るか、ということについてでした。

実際、ネットで検索をかければ様々な意見がありますが、祝辞の内容について以下の2つの視点から指摘をしていきたいです。

指摘1 十分なデータ(統計)に基づいた意見であるか
指摘2 論理構成として適切であるか

この記事でところどころ引用した部分は、一番下に載せてある東大のHPから参照*¹ しているので、興味がある方はぜひ参考にしてください。




早速、指摘1の内容から見ていきましょう。(大まかに分けて三分割しています!)


上野教授は、始め医科大不正入試問題を取り上げて、女子学生の合格率について統計情報を参照しています。
統計を重要視するのは客観的な意見の形成に大切ですが、東大理科3類の女子の合格率に対する男子合格率の1.03倍という数字について詳細に見ていきましょう。

平成31年度の理科3類の合格者数が101人で、二次試験の受験者数が331人というデータがあります*²が、そうなるとおよそ3人に1人が合格する確率となります。
簡単に説明するために、仮に合格者数が100人で受験者数が300人とします。
ここで東大の女子学生の割合は約2割(実際は2割もいかないですが)なので、以下の表のようになると仮定します。

理科3類     受験者数 合格者数
    全体    300    100
    男子    240     80 
    女子    60     20
    
このような場合であれば、男女ともに3人に1人が合格するので、合格率は33.33...%ですね。
では、受験者数はそのままで、合格者数が男女で1人分ずれたと仮定すると以下の表のようになります。

理科3類     受験者数 合格者数
    全体    300    100
    男子    240     81 (一人増える)
    女子    60     19 (一人減る)

これで合格率を出すと、男子が81/240=0.3375で、女子が19/60=0.3166...になります。
四捨五入して百分率にすると33.8%と31.7%ですね。

この女子の合格率に対する男子の合格率は、33.8/31.7=1.06624...になります。
つまり1.03倍よりも高い1.07倍になるということですね。
実際の数字ではありませんが、合格者の男女差が一人分ずれただけで合格率に違いが出ることが分かります

1.03倍という数字をどう扱うかは人によりますが、少なくとも、上野教授は東京医科大不正入試問題で女子学生に差別があったという話題の後に、この数字を出していることが指摘できます。
そして「女子学生が男子学生より合格しにくい」(*¹ l.9)、という主張をすぐ後で述べています。

他大の医学部の数字ももちろん重要ですが、東大の入学式の祝辞であれば、理科3類の1.03倍に焦点が集まりますから、この文脈のなかの1.03倍という数字を意図をもって上野教授が祝辞で用いていることは読み解けるのではないでしょうか。





また、男女で4年制大学への進学率に差があることの原因に「親の性差別の結果」(*¹ l.16)と言及されていますが、それを直接的に示すデータが不足していると感じます。

確かに、4年制大学の進学率に7ポイントの差がありますが、それを示した直後に成績の差ではなく親の性差別によるものだと断言していて、他の諸原因(例えば、家庭の経済事情・地方出身であるかどうかなど)考慮していないところに、危うさを感じます。
(もし過去の論文でその諸原因を考察しているのであれば、祝辞で紹介すると執筆した論文に注目が集まるかもしれませんね。)

さらに、その前で提示される第1と第2の情報とどう結び付ければいいのか、祝辞の場のように一回聞いただけでは少々根拠が不透明に感じると思います。
つまり聞いた印象として、上野教授が多くの根拠をもとに、親の性差別が男女の不平等につながっていることを主張しているということになります。
そもそも何割の親が性差別している…!と直接的に表すデータがあるのかどうかも疑問に残りますが、主張と根拠となるデータの間に乖離が見られるのかなと思いました。

定例研のある学生の意見では、新入生の親が参加されている中で、親全員が性差別しているような文脈で捉えられる発言は非常に失礼であるというものがありました。





また、「東京大学もまた、残念ながらその例のひとつ」(*¹ l.33)として、東京大学が女子学生に対する性差別が存在する学校であるという主張をしています。
その根拠としてその主張にいたるまでに様々なエピソードを入れていますが、冒頭で統計の重要性を訴えている割には、たった一人の男子学生の話や、女子学生を取り巻く風潮という形で述べられていて、主張への理由付けが少々弱いように感じました。
(異性の眼を気にして大学名が言えない人もいたり、女子学生を勧誘しないサークルがあったりするのは、事実に近いですが、でもそれらを性差別に直結させるのは、データより個人の見解によるものが大きいかと個人的に思いました。)

その一方で、その主張の後に述べられている大学院や教授職の女性の割合の低さに関しては、男女差が歴然としていて改善すべき状況であることには共感します。
ですが、統計を用いるのであれば、それらを志望する女性の人数や男女の割合も含めて伝える方が良いと思いました。
単に結果である、大学院や教授職に在籍する女性の少なさを伝えるよりも、冒頭で男女の合格率の違いに触れておられるように、大学院や教授職に関して男女別に合格率を示せば、祝辞の内容の一貫性も主張の客観性も担保されるかもしれませんね。




以上が、指摘1 十分なデータ(統計)に基づいた意見であるか、について定例研のなかで上がった意見をまとめたものになります。
長々と語ってしまいましたね…(=゚ω゚=;)。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


早速、次の指摘2の内容に入っていきたいと思いますが、文章が長く読みづらいと思いますので指摘1指摘2で分けてブログを書いていこうと思います!
指摘2はもっと短めになると思うので、ぜひ立ち寄ってみてください(*´∇`*)


以上、東大カープでした!



参考文献

*¹ 東京大学 「平成31年度東京大学学部入学式 祝辞」https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html 参照:2019年4月22日
  【 (*¹ l.9) などの表現は、パソコンで↑の画面を見た際に、「平成31年度東京大学学部入学式 祝辞」を一行目として該当箇所の行を表しています。l.9 なら9行目。】

*² 東京大学 「入学者数・志望者数」
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/overview/e08_01.html 参照:2019年4月22日