ゴースト もういちど抱きしめたい | 戸田学の映画誌

戸田学の映画誌

映画を中心とした事柄をあれこれ書いてゆく雑記帳です。

「ゴースト ニューヨークの幻」(90)のアジア版リメイク。

原作を制作したパラマウント初の日本映画ということになります。

前作は、その後、怖く逞しいお姉さんとなったデミ・ムーアが可憐で愛らしい主人公を演じて、日本でもファンを爆発的に増やした、もはや名作といってもいい作品です。



今回、そのヒロイン役を松嶋菜々子演じます。私は、松嶋菜々子が好きなので、それだけの期待で見に行きました。かわいきれいですよ。

ただ、松嶋菜々子は、映画というよりは、テレビドラマの主人公というイメージがあるんですよねえ。

相手役は、テレビドラマ「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督の四季シリーズのうち「秋の童話」「夏の香り」に主演したソン・スンホン。小泉孝太郎と市川染五郎の中間みたいな容姿をした韓国のスターである。つまり日韓のラブストーリーとなります。



朝の陽光が入る部屋のベッド。キャメラは足元から右側へと移動してゆく。眠ってる松嶋菜々子の背中が見えている。裸なのだろう。部屋の壁の棚には本が並んでいる。松嶋が目を覚ます。そして、「えッ!うそ…」という感じで起き上がる。右手で胸元を抑えながら、驚いている。



キッチン。ソン・スンホンが珈琲を入れている。やがて、着替えた松嶋菜々子がやって来て、いきなり平手打ちを喰らわし、そのまま出てゆく――。

ソン・スンホンは、「おッ」と苦笑いし、入れた珈琲を飲む。



東京の都市ビルの外壁モニターに松嶋菜々子のインタビュー姿が映っている。

周りがガラス張りの本社ビル上階でインタビューを受けている。

松嶋菜々子は、年商150億円の企業「アイ・アクロス」の経営者・星野七海である。



鈴木砂羽が松嶋菜々子に声をかける。

「大丈夫だった夕べ? あッ、憶えてないんだ。社長、お泊りだって、みんな知ってる。で、彼は?」。

「彼?」。

「ナンパした彼に決まってるでしょ」。

オフィスが静まり返る。



鈴木砂羽は、松嶋菜々子とは学生時代からの親友で、会社では彼女の右腕である上条末春。

鈴木砂羽がキャスティングされているのが物語的には微妙ですね。

松嶋菜々子の社長室。

「全然、憶えてない」。

「噴水の事は?」。

「あッ―」。


夜の公園。噴水の周りを千鳥足で嬉しそうに歩いている松嶋菜々子。誕生日パーティの帰りである。

「気持いいよ~ォ」。そしてよろける。「あ、あ、あ~ッ!」。

そこへ「大丈夫ですか」と助けに来た男がいる。それがソン・スンホンである。

「あッ、はははは! どなたか存じませんが、ありがとうございます」。

噴水の水が勢いを増し、二人にシャワーのように水が降りかかる。よく韓国映画である風景である。

車の横にいる鈴木砂羽はその様子を見ながら「いい加減にしないと置いてゆくわよ」という。



再び社長室。

「どうしよう?私なぐっちゃった」。

「自分の部屋だと思ったんじゃないの?」。



松嶋菜々子は、男にした失礼が気になって彼の家を再び尋ねる。

彼は、韓国から来日して1年になるジュノであった。陶芸家を目指し、家も陶芸家の師匠の持ち家を借りて住んでいる。彼は、休日には病院の小児病棟を訪ねるボランティアもしている。心がやさしいのだ。

裏には陶器を焼くための窯もある。松嶋菜々子は、いつしか彼といることが癒しになってきた――。



彼にろくろの回し方を教わる。後ろへ回った彼が松嶋菜々子の手に自分の手を添え、花瓶の制作を教える。

彼はヘラを渡し――。

「何か書いてください」

「下手で笑わないでね」。

線画でネコのような絵を花瓶に書きつける。この絵が小道具の1つとなる。

「これは?」。

「ムーミン」。

「ムーミンてなんですか?」。

「知らないの?」。

「へたくそ……」。

笑い合う。そして、見つめあって、自然にキスをする。

ここで、「ゴースト ニューヨークの幻」の主題歌「アンチェインド・メロディー」が流れる。完全に原作へのオマージュである。



いろいろとあって、やがて、二人きりの教会で結婚することになる。指輪の交換などの細かいやりとりがあって……。



オフィスで、パソコンの帳簿を調べていると、不思議な取引があることが分かる。

「東洋セントラル商事って、うちは取引してたっけ?」。

――と鈴木砂羽に訊き、調べるように命令する。

「じゃ、調べている間、取り引きを止めるね」。

このことがあとで災いをもたらすことになる――。

鈴木砂羽は、「今日で彼と出逢って1年目ね」と松嶋菜々子に祝いのワインをプレゼントする。



彼女は記念日を一緒に過ごすために急いで退社する。

ジュノは、部屋中をたくさんのキャンドルの炎で飾っている。と、その炎が突然消える。

川沿いを歩いている松嶋菜々子。手にはワインをもっている。橋を渡る。

そこへバイクが走ってくる。彼女のカバンがひったくられる。ワインが投げ出され、割れる。彼女もその場に倒れ、頭を打つ。男がバイクを止め、落ちたバッグを取ろうと戻ってくる。

ヘルメットの窓から見える男の顔には、鼻の上に真一文字の傷がある。

松嶋菜々子は「ちょっと、カバンを返してよ」と男にどなるも、バイクの男は逃走してしまう。



松嶋菜々子がふり返ると、ジュノがもう一人の彼女を抱きしめ、「七海! しっかりしろ! 救急車を呼んでください!」と叫んでいる姿が見える。

松嶋は「うそ…」といって、彼に触ろうとするが、その手が彼の身体を通りぬける。

すると上空から白い光が降りてくる――。

彼女の後ろから聞こえるジュノの「七海!」と叫ぶ声に、松嶋がハッとした瞬間に、吸いこまれそうだった光が再び上空へと上がっていった――。



病院へ着くと彼女は死んでいる。その自分の姿を茫然と見ている松嶋菜々子。

そこに幼い女の子やってきて、声をかける。

「おばちゃん……おばちゃん、新入りだね――。私、ゴーストだよ。知らないの、ユーレイだよ。おばちゃんも新入りのゴーストだね」。

その子は、カーテンの向こうへ顔をスッと自然に突きいれ、「頭うったんだ」という。



女の子を演じているのは、芦田愛菜。松雪泰子主演の日本テレビドラマ「Mother」(10)での虐待を受け、教師である松雪に保護の為誘拐される小学生を演じた名演ぶりはさすがに唸りましたよ。また、松たか子主演の「告白」(10)では、殺される娘役を演じていた。この映画でも、相変わらずの巧さを見せる。

彼女はジュノの姿を見て、「あッ、いつものお兄ィちゃんだ」という。彼がボランティアで世話していた女の子でもあったのだ。

女の子から、ゴーストとしてのいろいろな力を見せられる。やがて、松嶋菜々子は幽霊としてのコップの蹴り方をその女の子から教えられる。そして、その応用として松嶋菜々子は、いろんな力を会得して、やがて現世の人間と対峙する武器にする・・・。



原作の「ゴースト ニューヨークの幻」では、男性のほうがゴーストになる。このではその逆なのである。

やがて、彼の部屋へ松嶋菜々子を殺した鼻に上に傷のある男がやってくる。

松嶋菜々子は、彼に危機が迫っている事を察知する。

彼女はインチキ霊媒師・運天五月に出会い、自分の思いを彼に伝えてもらうことにする――。



原版でインチキ霊媒師を演じたのは、ウ―ピー・ゴールドバーグ。彼女は、この役でアカデミー賞助演女優賞を受賞している。

日本版で彼女の役を演じられるのは、樹木希林しかいないであろう。彼女は、芸の上での師匠である森繁久彌ばりのインチキ芝居の巧みさをここでは見せつける。でも、何度も今回の役は断ったらしい。

霊視の客で来た母娘の母親役を松金よね子が演っていて、樹木希林と共演する。芝居好きにはたまらないと思うのだが、その場面はごくあっさりと終わる――。



個人的には、松嶋菜々子が見れたのと樹木希林の珍演が楽しめたので、満足した。樹木希林は、今年は、この映画でのデタラメ芝居と「悪人」(10)でのシリアスな演技とで、その凄さを感じること度々である。

やっぱりこのひとは女・森繁久彌なのです。



この映画、よほど原作に思い入れがあれば別だが、映画とテレビドラマの中間ぐらいのパロディ作品ととらえた方がすんなりと楽しめるかもしれないなあ。



10月28日、梅田ピカデリー、完成披露試写会で初見。

11月13日、公開。