なんの予備知識もなく見た。
面白い。びっくりしました。馬鹿馬鹿しくて、リアリティがある。ユーモアがあって、そして悲劇的ですらある。
なんだこりゃ? という映画である。
プロデューサーは「ロード・オブ・ザ・リング」(01)~(03)シリーズの監督ピーター・ジャクソン。
そして、監督と脚本は、そのピーター・ジャクソンに見出された南アフリカ共和国ヨハネスブルグ生まれの新鋭ニール・ブロムカンプがつとめている。
今年のアカデミー賞に、作品賞を含め、脚色賞、視覚効果賞、編集賞にノミネート。映画を見ればこれらのノミネートは、納得できると思う。
映画が始まるとVTRの映像である。
MNUのエイリアン課のヴィカス(シャルト・コプリー)が、マイクテストをしている。
これからMNU(マルチ・ナショナル・ユナイテッド社)のエイリアン課の会社案内ビデオの撮影である。
MNUは、エイリアン管理事業を委託された民間会社である。
28年前に南アフリカのヨハネスブルグに突如として、巨大UFOが現れ、上空に浮かんだまま動こうとしない(感じとしては「インデペンデンス・デイ」(96)の巨大UFOをもう少し、小型にしてリアリティをもたらしていると想像していただくといい)。
南アフリカ政府は偵察隊を派遣して、船体に穴を開け、侵入する試みをする。
この間は、テレビのニュース映像的な画面で、リアリティをもたせ、また、そこへ関係者のインタビューをどんどんと挿入してゆく。つまりテレビのドキュメンタリー的な手法なのである(最近はこういった手法で制作される映画が多い)。
船内には、不衛生で栄養失調になったエイリアンがうごめいていた。彼らは単に故障したUFOに乗った宇宙難民に過ぎなかった。
南アフリカに世界中が注目している(面白いですね。なんでエイリアンがヨハネスブルグに来たんだろう。これは東宝特撮映画の異星人やテレビの「ウルトラマン」などに出てくる宇宙人が日本を襲うのと同じ理屈なんだろうね)。
政府はエイリアンのキャンプを設ける。周りをフェンスで囲まれ、まるで難民キャンプの形である。
ここは第9地区という。
エイリアンは、甲殻類に似ていて、野蛮で不潔な彼らは「エビ」と蔑称され、下流市民として蔑まれている。
やがて、キャンプはスラム化してゆく。
「第9地区は秘密が多い」。キャンプの空撮が入り、タイトルが出る。
面白いのは、その映像手法だ。主人公ヴィカスを追うドラマ映像がある。これはハンディカメラを多用して、よりリアリティを追及している。
さらに映画のプレスによるとブロムカンプ監督は、役者だけでなく、一般市民も含めて数十人のインタビューを試みている。一般市民に対しては、宇宙人ではなく、国境を越えてやってきた外国人に対するインタビューとして試みているのである。
そして、各報道機関が所有するニュース映像も使用。
それらをうまく編集で組み合わせて魅せる映像なので、このSF映画は、より一層の現実味を我々に突きつけてくる。だから、その後の馬鹿馬鹿しい場面模写も、こちとらは面白く納得してしまうのだ。
町には「エビ」の形を図案化した「エイリアン立ち入り禁止」等の看板が張り巡らされる。
一般市民の不安が高まり、暴動まで起こる。住民と「エビ」が揉めている。
インタビューでは「外国人なら許すが宇宙人なんだゼ」という男もいる。
やがて「エビ」が現金輸送車を襲ったりなんかもする――。険悪なムードである。
MNUは、エイリアンを第9地区から、郊外にある第10地区に強制移住することを決定する。
冒頭と同じヴィカスの会社案内である。「これでヨハネスブルグの人は安心です!」
だが、映画は、その後、ヴィカスの肉親や関係者のインタビューが挿入されてゆく――。
「こんなことが私の身内に起きるとは」、
「みんなに見てほしい。何が起こったか」、
「まさか、彼があんなことを――」、
「世の中にはルールがある。彼のことは許せない」等々・・・。
いったいヴィカスの身に何が起こったんだろう?と、見ているこっちは考えてしまう――。
ヴィカスは、第9地区へ強制移住の現場責任者として向かう。
ここからのシーンがおかしい。
画面は手持ちカメラのドキュメント風の映像である。
「エビ」たちは、人間のような動きをする。言葉も分かる。彼らの言葉は、映画的には字幕処理される。
「エビ」がMNUの装甲車のタイヤにひっつく。「それを食うな――」。ヴィカスがいう。「エビはゴムが好きなんだ」。
彼らを銃撃するので、ヴィカスはそれを止め、威嚇するように缶を投げつける。
「それはガスですか?」「いや、キャットフードだ。やつら好きなんだ」。ここらのユーモアが馬鹿馬鹿しくていい。
立ち退きのサインを「エビ」に求めて、書類を手(爪?)ではたき落される。「手形がついてるから、これがサインだ」。ヴィカスはあくまでも、前向きである。
ところがスラム化した第9地区では、犯罪が行われていた。
「エビ」が好きなキャットフードが法外な値段で取引されているのだ。
そして、異星人種間の売春が横行して、そこにはナイジェリア人の犯罪王もいた。
彼は「エビ」をキャットフードで騙し、彼らの武器を手に入れていた。
しかし、この武器は「エビ」の肉体でなければ使用できなかった・・・。
彼らは「エビ」の肉を食えば、そのパワーをとり、武器が使えると信じてもいた・・・。
ある小屋内の実験室で、二人の「エビ」が液体をカプセルに納めている。
「20年間かけて集めた。これを隠せ」と兄貴分の「エビ」が、やがて我々は、クリストファー・ジョンソンという名前だと分かる「エビ」に話している(この名前がふざけてますねえ。彼には、子どもがいて、ヴィカスは、この子に好かれることになる)。
そこへヴィカスとMNUの職員がやってくる。クリストファー・ジョンソンは、裏口から逃げる。
中へ入ったヴィカスは、「これは典型的なギャングの小屋だ」といい、あたりを捜索するうちに、ある液体を浴びてしまう・・・そこから、ヴィカスと人類の運命が変わっていく・・・。
とにかく馬鹿馬鹿しいなかに非常にリアリティがあり、難民問題を異星人に置き換えることによって、娯楽作にもなり、なおかつ問題定義として我々に突きつけてくるような感じがする。
ヴィカスを演じているシャルト・コプリーは、監督の友人で南アフリカのエンターテイメント業界でプロデューサーとして活躍していた人らしい。映画出演は今回が初めて。しかし、この映画の出演後、出演オファーが殺到しているという。
とにかく面白い映画である――。見てください。「エビ」はグロテスクだけどもね。子どもの「エビ」はかわいい。
4月10日(土)公開。
3月5日、GAGA試写室で初見。