鉄筋コンクリートの建造物を巡る旅・鉄コン其古卍 Part 17、安楽寺です。


安楽寺


茨城県水戸市にあるお寺さんです。建築界ではほとんど無名の物件らしく、ネットをみても建築目線のコンテンツは…皆無。


こちらがお目当ての本堂
安楽寺
このアングルが最もよく全体像をお伝えできるかと。

寺務所で頂戴した資料によると、この地に安楽寺が建立されたのが1625年。現在の本堂の落慶法要が営まれたのが1965年4月とのことです。デザインに関しては「阿久井計画研究室 設計」と記されています。このアクイさん、後ほどネットで調べたところ、どうやら阿久井喜孝氏(東京電機大学名誉教授)のことのようです。


ともあれ、モダニズム全盛の時代にできた建築であるだけに
安楽寺
安楽寺さんは、なかなかのツワモノです。


梁や手すりなどデザインの端々には
安楽寺
丹下健三の香川県庁舎(1958年)の気配を感じます。


やや引き気味で
安楽寺

このお寺さんを本堂建築目当てで訪れるなら、12月~3月をお薦めします。見てのとおり、葉が茂っている期間に本堂を観たり撮影したりするのは、難儀します。


本堂向かって左手
安楽寺


屋根の上の構造物は
安楽寺
阿弥陀如来の「摂取不捨」お救いの掌(たなごころ)を表現しています、とのこと。装飾パーツと思いきや…


境内左手にある坂を登って上からみますと
安楽寺


屋上構造物は
安楽寺
採光窓として機能しているようです。

本堂の正面(=黄色い扉が付いてる面)は北東を向いているので、採光窓の方位は南東ということになります。

Googleマップの3D表示を見て頂くと分かるとおり、安楽寺は、東・南・西を台地と樹木で囲まれており、日照条件は厳しいです。そこで屋根上に採光窓を設けることにしたんだろうと推測するのですが、時代の空気というのは確かにあるんですね。エピソードとデザインと機能の三つを融合させるあたり、「さすがモダニズム!」と感心しきりです。


ときに安楽寺さん、本堂以外にもナイスな点があります。寺務所が素晴らしいんです。これは嬉しい誤算でした。

一枚の画角にはおさまらないので、分けてお送りします。
安楽寺
境内入口から本堂に向けて、


傾斜に沿って1/3階くらいの高低差が2カ所に設けられています。
安楽寺


安楽寺


安楽寺


安楽寺
この寺務所は中に入ってみたかったですね~。堀口捨己の作品に通底する美意識が上手くデザイン化されてるように感じました。


昨今めっきり見かけなくなった鎖樋
安楽寺

DOCOMOMO Japanに登録されていないのが不思議なくらい素晴らしい建築に出会えてラッキーでした。かなりのおすすめ物件です!