2018/11/30:投稿
2021/12/31:更新

 鉄筋コンクリートの建造物を巡る旅・鉄コン其古卍 Part 10、日光市今市文化会館です。

今市文化会館を正面から見上げる

 日光市今市文化会館は、JR今市駅から北西へ約500m、東武日光線・上今市駅から南方へ約300mの距離にあります。

基本情報 ─────────────
竣工:1977年
設計:神谷五男+(株)都市環境建築設計所
施工:清水建設
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 宇都宮方面から国道119号で今市文化会館に自動車でアプローチすると、住宅・杉林・畑などが混在するエリアに突如、その姿をあらわします。駐車場に向かうルートはトリッキーで分かりにくく、また、最寄り駅から徒歩でアプローチするとしても、およそ「アクセスしやすい」とは言えません。

 後日、地図や航空写真を確認したのですが、会館と周辺との間に、明確な関係性や呼応感はなし…



 近くを走る国道121号は、会館と周辺環境を南北に分かつ空壕のように横たわっており、さらにJR日光線が東西方向のアクセシビリティのネックになっています。建築の評価で「周辺環境との調和」にも重きを置くならば、今市文化会館の評点は厳しいものになるでしょう。

 のっけから厳しいコメントで恐縮です。が、公共建築は建築単体としての評価もさることながら、周囲との関係性も大切だと思うので、あえて述べさせて頂きました。

 さて、気を取り直して、今市文化会館を画像で見て参りましょう。

 敷地のゲートから建物エントランスへと
今市文化会館を正面玄関へと続く階段から見上げて
つづくスロープ&階段

 こういう造形をみるたびに
今市文化会館を左前から

 クリエーターはどこから着想を得て、
今市文化会館の突出部を見上げる
どのように形態を捏ね上げていくのか興味が尽きません。

 画像左上の樹が落葉しきっていたので、
今市文化会館の全景
どうにか会館全体が収まりました。こういうときは広角レンズがほしくなりますね。

 横から後ろ側へ
今市文化会館の点景
こちらが南西面になります。

今市文化会館の点景

 公共建築、中でも市民会館系の建築は、
今市文化会館の点景
裏手の処理が甘くなりがちだと思います。用途や予算の都合上、ある程度止むを得ない部分もあるのでしょうけど、ファサードの造形が際立っているだけに「もっと気を配ってほしい」と願うのは贅沢でしょうか。

 とはいえ、基礎デザインが素晴らしいので、
今市文化会館の点景。まるで抽象絵画のよう

 いたるところが
今市文化会館の点景。まるで抽象絵画のよう

 絵になります。
今市文化会館の点景。まるで抽象絵画のよう

 反対側=北東面は、樹木と重なって
今市文化会館の側面を反対側から。木立が建物との間に立ちはだかる
よく見えません。

 そこはかとなく漂う
今市文化会館の点景
エーゲ海感。

 今市文化会館は、外観の奇抜さばかりがフィーチャーされがちですが、デザインの真価が発揮されているのは内部、とりわけホワイエから客席に向けての動線です。このとき内部撮影は禁止だったので、画像でお見せできないのが残念なのですが、各区画の区切り方や壁・天井・間仕切りの造形が実に素晴らしいのです。動線部分の画像は、設計に携わった都市環境建築設計所のHPでご覧になれます。