2018/10/20:投稿
2021/12/21:更新

鉄筋コンクリートの建造物を巡る旅・鉄コン其古卍 Part 1、栃木県体育館です。
栃木県体育館の全景

 栃木県体育館は県立の体育施設群。本館=体育館、プール館、武道館、弓道場などで構成されています。

基本情報 ─────────────
●竣工年
 本館:1965年
 プール館:1972年
 武道館:1977年
●設計:巴組一級建築士設計事務所
●施工:巴組鉄工所
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 巴組鉄工所は、地元出身の実業家・野澤一郎氏(1888~1978)によって創設されました。

 同社は1933年、立体構造建築「ダイヤモンドトラス」を開発。ダイヤモンドトラスとは、三角や菱形の部材を組み合わせて、自在に無柱大空間を実現する技術です。栃木県体育館のデザイン・構造は、ダイヤモンドトラスあったればこそ、と言ってよいでしょう。

 1992年、同社は<巴コーポレーション>に改組。近年では
 ◎虎ノ門ヒルズ
 ◎国立新美術館
 ◎東京スカイツリー
 ◎八重洲口グランルーフ
などの製作に携わっています。

 さて、本館=体育館を見ますと、『交差ヴォールト』と『尖頭アーチ』をミックスした様な造作に圧倒されます。地面基部から屋根にかけてせり上がる躯体が印象的。

栃木県体育館の天井を支持するアーチ

栃木県体育館の天井を支持するアーチのアップ

栃木県体育館

栃木県体育館を逆側、裏側からみたところ

金属とコンクリートが織りなす
栃木県体育館の近景、コンクリートアート

光景は一見の価値ありです!
栃木県体育館の近景、コンクリートアート

 つづいて、プール館。
プール館の遠景
 プール館は、本館=体育館の正面玄関向かって右手にあります。

 「建築としての饒舌さ」でいえば、本館よりプール館の方が上、との見方もできるでしょう。陸屋根フチの「雁行」
木漏れ日の中のプール館
はじめ、各部の意匠がバラエティ豊かで、用途と遊び心が絶妙にバランスしています。

プール館の遠景

プール館の正面アップ

過剰なまでの作りこみからは
プール館の正面アップ

高度成長期の息吹を感じます
プール館のアップ

 ときに、栃木県体育館は、新しい体育施設が宇都宮市西川田に整備されるのに伴い、段階的に廃止されることに…

 廃止のスケジュールは、

 ◎武道館:2019.11
 ◎本館・プール館:2021.03
 ◎弓道場:2021秋

 廃止後の取扱方針は未定。ということは、56年で本館の所期寿命は終幕決定! やはり、現代建築の命は儚い…。

規模・クオリティとも現代建築史の一翼を担う傑作だけに、保存&利活用して頂きたかった、と思います。