夕凪もぐら

あ、どーも。
一番手ありがとうございます。
一番に相応しい素敵なお話でした。

気になるところは、正直に言うとありました。
また、面白いかと聞かれたら、少なくともタイプ的に面白いー!!!!って話でもないです。
されど、どうしようもない現実に抗う人たちの気持ち、しかと受け取りました。
良作です。

少し掘り下げていきます。

・気になったところ

初めに気になったのは、冒頭の情報量です。
以前、不必要に人物に名前をつけない方がいいと、言ったことがありますが、多分そこは拘りの強い部分なので割愛。それを差っ引いても、序盤の説明に引っ張る力が少し足りないかと思いました。

自分の失敗を思い返して考えるに、作者さまにとって看護の現場は最も得意とする部分で、知りすぎるあまり読者に親切になり過ぎた。読者がわからないであろうから、丁寧に丁寧に書きすぎたのかなと。

例えば

 妊婦さんの入院自体はそんなに珍しいことではない。
 この病院は大規模なNICU(新生児集中治療室)を持っており、ハイリスクの妊婦さんを多数フォローしている。
 周産期の脳出血などはよくあるケースだ。
 出血の場合は安静保持が第一なのだが、脳炎となるとそうはいかない。」

一見無駄は一つも見当たりませんし、読みにくくもなく、必要な情報だと思います。

しかし読み物として興味をもたない限りは、この程度の情報もすんなり頭に入ってきません。
中盤から骨太な人間ドラマがとても良かったので、情報はこの人間ドラマの合間に小出しにしても良かったかなと思いました。

・良かったところ
テーマ性と物語がバランスよかったことと、蓮さんの泣かせ方。
小説を書いたり読んだりして思うのですが、大の大人の男を泣かせるのって、とてもコツがいります。
涙を流すその説得力のない物語をいくつも読みました。
兎に角、嘘っぽくなる。
そして、朝樹さんの作品は、
その様子、そのワンシーン、その瞬間が、とても上手く描かれていました。
そうだよね。男泣きしちゃうよねって。

・せっかくなので
これはただなんとなくなのですが、
雨が降るシーンから晴れるまでが、心境に見立てられていた様な気がしたので、そこに綺麗な比喩や描写入れたり、冒頭から雨のシーンでもよかったかなーなんて思ったりなんかしちゃいました。
どうだろ。ぼくのエゴでしょうか?
梅雨の止まない雨って、なんか切ないし。
これでマイナスはないにしろ、ちょっと勿体無い気がしました。

どうも。読ませて頂いて有難うございます。
トップバッターに相応しい作品でした。


追記
朝樹さんはなろうの人気作家の一人でして、どうやってこの人気を維持しているのか。
ぼく個人の研究の対象でありまして、未だにその懐の深さが測りきれておりません。
技巧に頼りすぎず、飾らない真っ直ぐな言葉にそのヒントがあるような気がしますが、それは天性のもののようにも思えます。
こういう真っ直ぐな気持ちで自分の物語と向き合える朝樹さんを羨ましくさえ思います。