夕凪もぐら
ではでは、ご所望の辛い感想をと…思いましたが、正直柏村さんの文章は随分スタイリッシュになってしまいまして、なにを突っ込んでいいやら。
上から目線とは絶対思って欲しくありませんが、初めに言わせて下さい。もの凄く上手くなりました。
それはもう遠くを見上げるくらいに。
一応主催者なので、以下は激辛で行かせて頂きます。では、がんばって突っ込んでいきますので、覚悟してください。
まず冒頭の姉ですが、この人が男なのか女なのか解らず、中々確証がもてないまま、だいぶ先まで読んで、決定的に女子と解り、最初に戻り、読み直しました。
はい。つまり冒頭を2度読み直しました。
主人公が誰かとか、シチュエーションだとかが描写から中々イメージできなかった。わざとだとしても、マイナスの方が大きいんじゃないかと思います。
まずそこ。
あとはスタイリッシュな描写の中に、いくつも雰囲気に合わない言葉がありました。
序盤だと、
「無い袖は振れぬなんて先人達はよく言ったものだと思う。」
だとか上手いこと言うことを優先して、先ほど述べたシチュエーションだとか、主人公は誰なのかだとが曖昧になっていて、
中盤から後半は、集中力が切れたのか、
「狂喜乱舞した」だとか「このまま心臓麻痺して昇天してしまうのでは」だとか、明らかに今まで作り上げてきたシリアスな雰囲気を色物方面に向ける表現。
あくまでこの女性二人のキャラと、この物語の根底、狂気、異常性、全ては、確かに良くできているが、偽物である。そう読み取りました。
持ち味でもありますが、時に悪い癖です。
追記
柏村さんは大変勉強家でありまして、また色んな実験を試すマッドサイエ二ストであります。
辛口故に偽物と乱暴な言葉で表しましたが、そもそも小説書きはフィクションを取り扱っているので、自分の体験や思想を切り売りするやり方だと、直ぐに底をついて何も書けなくなってしまいます。
無から有。ありもしない出来事をでっち上げ、ありもしない世界を創造する。
そんな錬金術をいち早くものにしている作家様だと思います。