歌舞伎町で、本格的に仕事を始めた長女からの電話で起こされた。

『今からママん家行っていい?』

3秒後

ピンポーン



また家の前から電話してきてる
眠い目で玄関の扉を押し開けて出迎えた。





…娘はよくしゃべる





自動的にしゃべる

ペラペラ
ペラペラ



あー
ママん家来るとなんかテンション上がる。
見て~
お絵描きしたの。

もっとお絵描きした~い!






それは、何時も持ち歩いている
大学ノートに描かれていた。
アンティークなドレスを着た少女が
祈るように両手を組んで、
何かを見上げている絵だった。

月だろうか

夢だろうか

神だろうか


鉛筆で丁寧に描き込んである。
ドレスのパターンは
少し凝ったモチーフを
同じ大きさ、
同じ形、
同じピッチで
丁寧に描き込んであって

彼女の絵に対する情熱は以前となんら
変わってはいなかった。


次のページには伏し目の男性のドローイングが
伸び伸びとしたタッチで潔く描かれている。

娘は はにかみを誤魔化すように
声のトーンを上げて





この絵
ママが描く絵に似てなーい?
なんかどんどんママの絵に似てくるんだけど。





と嬉しそうにノートを差し出す。

確かにクロッキーもデッサンも最初は私が指導した。
親子でなくとも似るものだろう。

私が教えた事を習得してくれていたことが
至極うれしかった





ふたりの娘達だけのために始め
いつの間にか膨らんだ絵画教室を想い出す。

長女は確かに形と質感を捉え、紙に写し出す事に長けていた。
長子に多い絵のタイプで
子供らしい元気な絵とはまた違った大人の絵のような緻密さだった。



長子というのは
常にしっかりしなくてはとなんらかの責任感と荷物を背負い込み

大人になっていく運命なのだろうか






雨が降ってきた
娘が打たれなくてよかった…





物音がにもピクリともせず
猫のように眠っている
まだ18の娘






お仕事
お疲れさま