【上 京】


なぜそんなに生き急ぐのか


それは男だから・・・・・


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1950年・・・


戦後の復興と共に日本には数々の“組織”が乱立する群雄割拠時代に突入した


※別名世紀末モード


組織同士の血なまぐさい戦争により数々の血が流され、潰れた組織もあれば、吸収された組織


或いは組織自体を解散する等、規模の小さい組織から順にこの世から姿を消していった。。。


約7年の群雄割拠時代は唐突に終わりを告げる。


警察の介入では収集がつかなくなった政府は、当時の最高権力者「東北の御仁」の異名を取る


「竹井 歩湖陳(たけい ぽこちん)」へ和平交渉を願い出る。


竹井の尽力により、群雄割拠時代(世紀末モード戦争と呼ぶ)は終わりを告げ、


日本を大きく「東北・関東エリア=昇(しょう)」「中部・近畿エリア=龍(りゅう)」「中四国・九州エリア=拳(けん)」


と3つに分断し、各々に担当の組織を振り分けた。(天下3分の計)


昇は竹井の息がかかった男であり、東北ボーリング選手権3位の実績を持つ


「東北の不沈艦=葉蒲田 弘美(はかまだ ひろみ)=通称カマ」


龍は中部エリアで絶大なる権力を持ち、ゴルフのシャフトを振り回す暴れん坊


「遼君大好き=生田 山車(いきた だし)=通称ヨコ」


拳はその類まれなる人柄でのし上がり、焼酎1杯で顔まっかっか


「ドブで象られた男=尾石居 初美(おいしい はつみ)=通称イシ」


この3人にまかされる事になる


しかし一方で、竹井は心労とストレスと下半身肥大により天下3分の計に対する


法令(局中ご法度5か条)を定めた後命を自ら絶った。。。。


病名:下半身一部肥大過症候群(現代の病名では結婚できない症候群)


局中ご法度5か条


①何人たりとも他の保有する土地での商売等の類を禁ずる


②何人たりとも一般人を含む他場所の人間を傷つけてはいけない


③何人たりとも俺の前は走らせない


④何人たりとも、生活者の視点に立って、一歩先の安全・安心な食生活の実現を目指さなければならない。


⑤何人たりともお尻をふかずんば孤児を得ず


上記5か条に逆らった組織は取り潰しの上、海外(モルディブ)へ島流しとする。


この5か条は日本の憲法と同等の効力があるとされ、以降組織同士の諍いも無く、


日本は平定される事となる・・・・・


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2010年 冬 東京


「いや~ここが東京かぁ、しかし人が多いなぁ」


格子柄のシャツに格子柄のパンツ、格子柄の麦わら帽子を被ったその男こそ


本作の主人公である「美田煮 匠:通称ミニー」その人である。


奈良県で生まれ御年16歳。


中学卒業後単身家を出奔し、東京へ出てきたのである。


幼少の頃から負けん気が強く、中学の頃は喧嘩にあけくれた札付きの悪ではあり、


弱気をくじき、強気を助けるという残虐超人ぶりの性格の持ち主でもある。


「天帝ミニー」


これが、奈良での通称である。


こんな調子であるから、両親からも見放されていた(両親は固い職業の人である)のは当然の事。


中学を卒業し、何もせず家で半ニート化してた矢先


テレビで「極道の女達」を見て感化され、


「俺は組織の人間になる!」と宣言。


両親も家を出て行ってくれるのは万々歳との思いで、息子に100万握らせて(手切れ金?)


息子を東京に行かせた訳である。


本当なら大阪のはずが、笑っていいともみたさに東京へ進出してきたという単純さ・・・・・・


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「それにしても人が多いなぁ、とりあえずどうすっかなぁ・・・」


東京駅に降り立ったミニーはあても無く、山手線にのり、新宿に向かった。


「ここがタモさんがいるとこね」


一人言をぶちぶち言いながらアルタに向かって歩き出すミニー。


ドン!


「おらぁどこに目ぇつけとんじゃぁ!!!」


不意に肩がぶつかった相手に凄むミニー。


「お前誰に物言ってるかわかってんのか?」


男は小声でミニーに尋ねる。


「お前に決まってるやろう!なめとんのかぁ!」


大声でわめきちらし、顔と顔を2ミリまで近づけて威圧するミニー。


「この野郎!」


男が腕を振り上げたその瞬間。


「まて!」


後ろに立っていた男、兄貴と呼ばれたその男は一見すると普通のサラリーマンに見えるが、


鋭い眼光は尋常では無く、オーラの泉みたいな男だった。


「兄さん、簡便してやってくんないか」


ミニーは圧倒的な威圧感に物怖じし、動く事が出来ない。


「いくぞ、トチー!」


男は颯爽とその場を立ち去った。


「おい!お前覚えてろよ!待って下さい。兄貴~」


ミニーは体の振るえが止まらなかった。


あの男できる。


男としての勘がミニーにそう告げた。


もしかして、自分が行くべき道はあの男の元ではないだろうか?


ミニーは自問自答しながら、その場にへたりこんだ。(後で気づいた事だが、少しおしっこが出てた)


その晩、ミニーは近くの定食屋で、サバの塩焼き定食を平らげると


そのまま、近くのカプセルホテルへ向かった。


簡単な受付をすませ、早速サウナへ向かう。


ミニーは風呂は嫌いだが、サウナが好きという特殊能力の持ち主である。


ギッ。


腰にタオル一枚かぶせ、サウナに入るミニー。


「お前昼間の!」


サウナの中には小柄な男が一人いたが、昼間因縁をつけたあのトチーと呼ばれた男だった。


「てめぇ!昼間はよくも因縁をつけてくれたなぁ!」


見るとトチーと呼ばれる男の両肩には、大きく【VOLVIC】としるされたタトゥーが記されている。


「おう!お前昼間の落とし前どうつけるつもりだ!」


大声をあげるトチー。


「おどれが肩ぁぶつかったからやろうが!やんのかこらぁ!」


二人の睨み合いが続いた。


途中から、なんか先にサウナ出たら負けみたいな雰囲気になり、お互いは睨み合ったままサウナに


立ち続けた・・・・


勿論他の客は二人のものものしい様子から、中に入ってくる者は誰一人いない。


5分・・・・10分・・・・20分・・・・・


時間が経過していく毎に意識が朦朧としていく。


「おい、いい加減根をあげたらどうや!」


ミニーが問うとトチーも負けじと


「誰があげるかい!お前こそ根をあげたらどうだ!」


といがみあいは止まらない。


そのうち汗もでなく、カラカラ状態になり、キャン玉もダランとした状態になっている。


そして・・・・・


40分が経過したその時だった。。。。


バタン!


トチーが倒れた。


「おらぁ!おれの勝ちじゃぁ!」


拳をつきあげ、雄たけびを上げるミニー。


「ん・・・しかし、このままじゃ死んでまうのぉ」


ミニーは倒れたトチーを抱え上げ、風呂の外に出た。


数分後・・・・


「ん・・・俺は負けたんか?負けたんかぁ??」


涙ぐむトチー。


フルーツ牛乳を飲んでいたミニーは、トチーに向かって


「喧嘩両成敗や!俺はミニー。お前トチーやろ?」


と言った。


トチーは数秒の沈黙の後、


「あぁそうだ。悔しいけど俺の負けだ!どうおだこれから一杯いかないか?」


「もちのロンや!オフコース!!!」


二人は喧嘩のあとはほっぺにチューをし、着替えようとしたのだが・・・・・


「な・・・無い!俺の財布も洋服もなんも無い!」


ミニーはロッカーにカギをかけなかった為、麦わら帽子以外の全てを盗まれた。


※奈良ではカギをかけるという習慣が無い為、ミニーは無実


「どうした?」


「トチー偉いこっちゃぁ!!全部盗まれてもうたぁ・・」


「大丈夫だって!東京は下半身さえみせなければ大丈夫さ!」


親指を顔面につきたてるトチー。


麦わらをあそこにかぶせるミニー。


二人は笑顔を見せながら、颯爽と夜の歌舞伎町へ繰り出した


・・・・・・・2分後。


ミニー連行。(爆笑するトチー)


罪状:麦わらではおさまりつかん罪(懲役2日、執行猶予28年)


あぁ東京って怖いのね。。。


次回【出会い】


に続く・・・・