本年度2回目の座談企画を実施しました。前半は 自治医科大学看護学部・島田裕子先生にお話しを頂きました。内容はこちら ( 9/14 座談会前半:自治医科大学看護学部 島田裕子先生のお話 | 栃木避難者母の会(夜明けの会))です。後半は、「住民票のない生活について」それぞれ話してもらいました。ここでは、トークの一部をご紹介します。
実施日: 2025年9月14日(日) 10:00~12:00
参加者: 自治医科大学看護学部 島田裕子先生
NPO法人うつくしまNPOネットワーク(UNN)事務局長 鈴木和隆様
Aさん:双葉郡 団体職員、兼業農家、震災時60代、避難指示準備区域(2017年3月
31日に避難指示が解除)
Bさん:双葉郡 団体職員 帰還困難区域、震災時50代
Cさん:双葉郡 主婦 帰還困難区域、震災時60代
進行:母の会担当
進: 今日は「住民票がない生活」について、お話を聞きたいと思ってます。企画の意図として、福島原発事故による避難発生後、住民票の二重登録の必要性を伝えていた学者や弁護士がいたことを覚えてます。とても重要だと思ってました。住民票がないのでゴミを出すのも、非常に肩身が狭い思いをすると話していた声も印象に残っています。私自身、以前(2016年)、親の面倒を見た時に、インフルエンザ予防接種を受ける、介護認定を受けるのに毎年、避難元、避難先それぞれの自治体に報告や確認しなければなりませんでした。面倒を見たのは非常に短期間だったので救われましたが、住民票がない生活がどれほど、不便で過酷であるか、それを皆さまは14年間も続けておられます。住民票にまつわる話を何でも良いので、できればどんなことが不便であるか具体的に話をして頂ければと思います。
参考までに、本年7/19 下野新聞に掲載された小山市の避難者の詩を紹介します。(詩は下記に紹介)
日本では、毎年のように様々な自然災害がやってきて、私たちのような「広域避難者」が生まれております。水面下では非常に不便な生活をしていることも想像しています。
B: 家も建てたし、10年経った時、住民票を移す気持ちもあったけど、同級生の中で誰も移していませんでした。私は、震災前から毎月、親の命日にお墓参りをしていたので(お墓も近くにあった)、親のお墓を持ってきたいと思って今住んでいるJ市の共同墓地を購入したいと思ったのです。ところが、住民票がないと申し込めないということがありました。あと、私も、10年以上にわたる避難生活で知り合いがたくさんできました。市議さんや県議さんにも知り合いができ、お世話になっています。しかし、選挙権がないんです。「住民票を移したら、お祝いをするよ」、なんて言われますが、正直、簡単に判断できる問題ではないです。住民票を移したら、(故郷の)町が存在しなくなるという思いがあります。家族の中で住民票がバラバラなのもおかしいな、と思って移せていないです。

A: ちょっとメモってもらいたいのですが、震災時の人口は・・、直近の人口は・・・(話を以下にまとめました)
震災時人口(町の広報より) 2024年11月末住民基本台帳
浪江町 21,434人 ⇒ 14,666人
双葉町 7,140人 ⇒ 5,303人
大熊町 11,505人 ⇒ 9,947人
富岡町 15,937人 ⇒ 11,338人
そもそも住民基本台帳の登録者数と、実際に住んでいる人口の数は違っています。そして、戻ってくる人も少なく、今後10年ぐらいで、どのくらいの帰還者あるいは移住者が増えるか、それぞれの町が目標をたてたり、試算したり、人口の維持には、とても苦心している。つまり、住民票を移すか移さないか、登録者数は、やはり自治体の存続に関わっていると思います。
※ 2025年時点HP公開されている移住者数
浪江町 2,251人 双葉町 170人 大熊町 1,345人 富岡町 2,565人
富岡町は「震災後に町外から移住してきた人が半数以上を占めて」います。(https://www.fukushima-iju.jp/city/TOMIOKA)
※ それぞれの町の目標数や予想数
浪江町 8,000人(2035年復興推進計画) 双葉町 2,000人、
大熊町 4,000人(2034年帰還人口+移住人口) 富岡町 5,000人(2034年)
A: あと、私は、福島と栃木を行き来していますが、双葉郡の自治体で色々な行事やイベントがあります。参加して下さいと広報され参加したいのですが、避難先にいるとうまく参加できません。また、避難先で、敬老会の案内を見ますが、住民票がないので参加できません。民生委員が回る対象にも該当しません。双葉郡の民生委員は訪問してくれますが、福島県外に住んでいると、訪問してくれないのです。要するに、心のケアということが抜け落ちています。
C: 家も建て、お墓も持ってきたけど、地域に溶け込めるかと言うと この年になると難しいなと感じている。住民票も移さなくてはならないとわかっているけど、住民票を移したら、完全に故郷との縁が切れる感じがする。だから、移せないし、移そうと思わない。家族も同じ気持ちだ。
少し困っているのは、こちらで太陽光発電の助成を受けられないことかな。地域の高齢者活動でポイントも受けられない。あと、我が家は、守られましたが、友人のお孫さんは、学校に入る時に住民票を移してくださいと言われたようで、校長先生の判断によっても対応が変わってくるようです。家族内でも住民票がバラバラと言う家庭もいます。
進: 確かに、どちらにも属さない境界と言うか、グレーゾーンで、これを言ったらどうなるんだろうと判断が難しい立場を自覚させられてきました。我が家も子供が高校に入ってから、恐る恐る学校に問い合わせをしたら、「住民票を移してください」と言われ、私と子供だけ早急に移したことがあります。夫は福島県内で仕事をしていたので、移せませんでした。
A: 我が家は、震災後横浜に避難して、息子がこれからどこで働くかと考えた時に、福島県により近い栃木県内に本社がある企業を考え面接を受けました。そうしたら、「福島の住民票では採用できません。」と言われ、息子は住民票を移しました。すると、避難者登録から消され、救援物資がもらえませんでした。そして、やっぱり、住民票を戻そうと思ったのですが、もう戻せないと言われ現在に至っています。
C: 私は、1回は(他に移した住民票を被災自治体に住民票を)戻せるけど 2回は戻せないと聞いたことがありますが・・・。
進: 賠償やADRなども、時期が早いと認められなかったり、意見や苦情が重なってやっと認められたりしてきました。そして、救済される、救済されないかで、避難者同士で対立や分断も生まれ、メンタルにとても大きな影響を与えてきました。
鈴木: 避難者の話を聞いていると、今となっては、国は(県も)、広域域避難者を勝手に避難している(人達)と思っているのではないのでしょうか。
能登半島地震でも広域避難者が生まれていますが、原発事故の教訓が生かされていませんね。
A: 原発再稼働をするにしても避難計画を策定しなければなりませんし、国は責任を持って住民に避難指示を出さなければなりませんし、住民を守らなければなりません。でも、国のやっている東日本大震災復興計画と原子力災害復興計画は、本当に矛盾しています。例えば、今回の大震災によって、津波を対象にした「災害危険区域」は浜通りの各自治体で指定区域を指定し、このエリアでは、「住宅、アパート、ホテル、民宿、児童福祉施設、医療施設などの宿泊を伴うもの」は、制限され、それ以外の店舗や工場、倉庫などの建築は可能と明記されています。ところが、原発立地自治体の双葉町、大熊町では、ハザードマップはありますが、災害危険区域が定かではありません。津波浸水想区域は住民は住んではいけないと土地が買収されました。ところが、その区域に、原子力災害伝承館ができて、宿泊施設ができています。例えば 令和7年8月31日の津波注意報で 浜街道(県道)は通行止めになり、災害伝承館も閉館になりました。住民が避難していなくなった町に、箱物建設は認められる復興計画に違和感があります。双葉郡自治体で復興計画をつくってやっていますが、箱モノをたててやっていることはほぼ同じなんです。
※編集部で確認したところ、津波への避難行動はわかりやすいイラスト付きで、住民にとっても危機感を持てる内容でした。しかし、住民にとって危険なのは、津波だけではありません。原発はまだ収束しておらず、廃炉も道半ばです。津波を対象にした復興計画は住民の命を守るという意図が明確に提示されているのに対し、原子力災害の住民避難計画は従来通りの役所文書スタイルのままです。原発収束・廃炉作業は長期間に及ぶものですが、その間に想定される危機に対し、住民の命を守る責任所在は、立地自治体なのか、国なのか、どこなのか、今もってよくわからないことが改めて浮き彫りになりました。これでは、住民が安心して町に戻れないという実情があることも見えてきました。
進: 恐らく、復興は一見、町がやっているように見えますが、肝心なお金の使い方の法律は、国から、内容が決められているのではないでしょうか。だから、ほとんどが新規箱モノばかりが建設されているのだと思います。
鈴木: 双葉郡8町村など避難指示が出た市町村には震災直後から、経済産業省など中央省庁から復興支援のために多くの職員が現地入りしました。被災した市町村の復興計画策定にも強い影響を与えました。被災者の皆さんに寄り添うよりも、国の計画に沿ってしまった部分も多くなったかもしれませんね。
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「 住民票がありません」 北村 雅
2025年3月11日
あなたはどこで迎えたか
テレビでは復興した真新しい建物を
映していた
だがインタビューに答える人に
笑顔は見られない
本当に知りたいことは不透明で
ニュースは真実を伝えていない
原発事故の避難者の悩みを
知っているだろうか
帰る 帰らないだけではない
住民票がなくてこの地の選挙が
出来ないのだ
私の住民票は双葉町
福島県内の選挙なら今の住所で出来る
でも栃木県内の選挙は出来ない
住民票はそんなに簡単に移せないのだ
これが原発事故の後遺症
今後同様のことが起きたら同じ境遇が
生まれることになるのだ
ふるさとを捨てる気などさらさらない
原発事故で奪われたのだから・・・・
原発建設は国策だから
最後まで見届けてくれないか
知らないふりをしないで
※この事業は、うつくしまNPOネットワークの一食福島復興・被災者支援事業の助成を受けて
活動してます。